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立読み
グローバル・ナショナル・ローカルの現在
A5判/上製/426頁
初版年月日:2006/03/31
ISBN:
978-4-7664-1259-8
 
(4-7664-1259-1)
Cコード:C3030
税込価格:4,950円
グローバル・ナショナル・ローカルの現在

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「序章」よりの抜粋     山本純一

われわれは今、どのような時代と空間を生きているのだろうか?
これが本書の問いである。設問の背景には、1989年のベルリンの壁崩壊に始まる危機による再編の時代から、グローバリゼーションにともなう再編による危機の時代へという認識がある。その危機の深さは、9. 11「同時多発テロ」とその後のイラク戦争や、抗議の自殺者までをも出すようになったWTO(世界貿易機関)反対運動を見るだけで十分だろう。ただ本書では、フーコーがいうようなメタのレベルではなく、具体的な地域や事例に落として考えてみたい。「もうひとつの世界」や「望ましい秩序」の明確なビジョンを描くことがまだできず、これを構想し実現するにはまず「現場」を知る必要があると思うからだ。そして、グローバリゼーションといわれる現象によって、リージョナルやナショナル、ローカルなレベルでどのような位相のずれや変容が起きているのかに焦点を当てたい。何か大きな地殻変動が深層で生起しているのではないかと思うからだ。
一例を挙げよう。メキシコ最南部チアパス州の古都サンクリストバルは、人口10数万の小さな都市だ。ここで先住民の生活改善のために活動している非政府組織(NGO)のDESMI(メキシコ先住民経済社会開発市民連合)は、2001年以来毎年、チアパス州のみならず、近隣諸国の農民や社会運動家を招待する「連帯経済に関する国際ワークショップ」を開催している。昨年(2005年)は11月8日から3日間にわたり、グアテマラ、エルサルバドルからの出席者を含む90名以上が参加した。その目的は、1)各参加団体・共同体の実践活動から連帯経済構築のプロセスについて分析・考察する、2)代替モデルとしての連帯経済の構築における関係性の重要性について考察する、というこれまでよりも概念的、理念的なものであった。このワークショップのテーマである連帯経済とは、現在世界で主流を占める新自由主義的な、つまり市場原理を絶対視するグローバリゼーションに対抗して世界各地で生起している、協働主義(アソシエーション)にもとづいて国家と市場と(地域)社会の新しい関係を構想・構築しようとする政治経済社会運動といえる。
このような事例をどこまで一般化できるのかはわからない。だが、グローバリゼーションを契機として、リージョナル/ナショナル/ローカルなレベルで大きな変化や異議申し立てが起きているのは、この連帯経済のみならず、サパティスタの反グローバリゼーション運動とそれに対するメキシコ国内外の市民社会の共鳴ぶりからも明らかと思われる。

(中略)プロジェクトを立ち上げる段になると、単にさまざまな地域の異種混淆性や変容を取り上げるだけでなく、グローバル・リージョナル・ナショナル・ローカルなレベルでのガバナンス(協治・共治)の必要性も視野に入れることが重要だと思うに至り、グローバリゼーションの時代におけるさまざまな地域の国家や市民社会、共同体等のアクターの役割・機能を考察するという、より包括的な目的を設定した。グローバル化の位相だけでなく、権力関係や空間的ネットワークの有り様、つまりネグリ&ハート(2005)のいう「階層秩序の地勢図」を具体的な事例に即して描くことも企図したのである。(以下後略)
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