こうしたコンピュータの「消滅」は、技術的発展の帰結ではなく、人間の心理的な帰結によるものである。
[ 中略 ]
心理学者のJ.J.Gibsonは「視覚的不変項」と呼び、哲学者のHans-Georg Gadamerは「地平」、またMartin Heideggerは「熟練」と称している。
PARCのJohn Seely Brownは「周辺」と呼ぶ。これらすべてに共通なのは、それを意識せずに使うことができ、当面する目標に集中できることである。
この視点に着目し、本書では空間経験と理解の関係を扱うイメージスキーマ、ハプティックとタクタイル、ギブソンの生態学的視覚論などのテーマをわかりやすく解説している。
もう1つ動向であるパーソナル・ファブリケーションについては、その提唱者ニール・ガーシェンフェルドによる言葉を紹介したい。
現在「リテラシー」は「読み書き能力」という狭い意味でしか一般に理解されていないが、ルネサンスの頃に誕生した当初、この言葉は、あらゆる表現手段を駆使する能力という、今よりずっと広い意味を持っていた。
個人のための情報技術とモノづくり技術が成熟した現在、かつてルネサンスに活躍した万能の人の如く、我々は自身の中の「本来のリテラシー」を回復させる必要がある。その第一歩として本書はより深く専門的な情報にアクセスするためのリファレンスを提供したい。 |