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編集後記  第66巻6号 2018年6月
 

▼学校における健康診断は、疾病をスクリーニングし健康状態を把握する、学校における健康課題を明らかにして健康教育に役立てる、という二つの役割がある。
 後者の役割も重要であり、健康診断の結果は、学校保健統計調査として政府の統計窓口e-Statで公表されている。

▼平成二十九年度の報告によると、全国では、裸眼視力が〇・三以下の者が小学生八・七%、中学生二六・五%、未処置歯のある者が小学生二三・〇%、中学生一六・二%、アトピー性皮膚炎のある者が小学生三・三%、中学生二・七%、喘息のある者が小学生三・九%、中学生二・七%、心臓病のある者が小学生〇・七%、中学生〇・八%、腎臓病のある者が小学生〇・二%、中学生〇・二%であり、子どもの有病率の高い慢性的な健康問題は、近視、齲歯(うし。むし歯)、アトピー性皮膚炎、喘息であることがわかる。これらの統計は、性別、地域別にも示されているが、最も地域別ばらつきの大きいのは齲歯である。

▼健康診断で要精密検査、要医療となった場合、受診が必要となるが、経済的な問題で受診が妨げられるケースはないとは言えない。学校保健安全法には「学校病」という定義がなされており、地方公共団体は、その疾病の治療のための医療に要する費用について必要な援助を行うものとすることになっている。この対象となる疾病は、トラコーマおよび結膜炎、白癬、疥癬、膿痂疹、中耳炎、慢性副鼻腔炎、アデノイド、齲歯、寄生虫病が該当する。対象となる疾病はやや時代がかっているきらいはあるが、齲歯も対象になっているために、恩恵を受けられる子どももいるであろう。

▼一方、健康保険法では、未就学児の医療費の自己負担は二割、就学後では三割であるが、厚生労働省が調査した「平成二十七年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」によると、全国すべての都道府県および市区町村で子ども医療費助成制度が実施されている。しかしながら、自治体によって、医療費助成が受けられる年齢、外来・入院の適応、自己負担、所得制限の有無に差がみられる。実際、都道府県の約五割が、未就学児までは外来・入院ともに医療費助成を実施しているが、小学生になると約二割、中学生においては、入院では約三割、外来では約一割の都道府県が助成しているに留まっている。また、都道府県に加えて、市区町村が独自に医療費助成を行う場合もある。たとえば、東京都内は外来も入院も十五歳まで無料であるが、千代田区や北区では子どもの入院費の助成がさらに上乗せされ十八歳まで無料となっている。

▼子どもの医療費の自己負担が助成されることに対しては、医療の乱用につながっているという批判もあるが、この制度によって助かっている家族が多いのも事実である。未就学児は疾病にかかりやすいので、多くの自治体が医療費の援助を行っているのは理解できる。
 しかしながら、小学校や中学校における医療費の自己負担がゼロから三割までのばらつきがあっては格差が大き過ぎる。格差を縮小する対策が求められているように思う。

 

(馬場園 明)
 
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