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編集後記  第66巻8号 2018年8月
 

▼夏本番を迎え、海に山に家族で出かける機会も多い夏休みですが、美術館もお薦めです。名画に触れることは、子どもの感性を刺激するだけでなく、きっと子どもに付き添う大人の心にも栄養になります。

▼特集1は、「難病をかかえる子どもの教育」です。小児の難病には、神経、心臓、肺、消化器、代謝・内分泌、腎・泌尿器、骨系統、血液、腫瘍などの疾患は多岐にわたり、症状や治療も様々です。慢性あるいは進行性のこともあり、長期的なサポートを個別に行う必要があります。

▼同時に、難病をもつ子どもに起こる心理的ストレスにも目を向ける必要があるでしょう。難病の場合は、病気の原因がわかるまでに様々な検査を受けたり、入院が長期に及ぶこともあります。また、検査や治療に伴う痛みや恐怖感、子どもの前で繰り広げられる親と医療者とのやりとりなど、子どもにとっては不安になってしまう場面が多くあります。さらに、病気の子どもの家族にとっても、看病で十分な睡眠もとれず、入院生活と家族の生活の両方を支えるストレスは想像以上のものがあります。ようやく退院が決まったときでも、それは治療の終わりではなく、その後も定期的な通院や入院が必要となります。

▼病気についての治療方針や予後などの説明は、小児期には主に医療者と親の間で行われていますが、最近では、病気の子どもの不安や恐怖心をできるだけ軽減する目的で、チャイルド・ライフ・スペシャリストなどが、年齢に合わせて子ども自身にも検査や治療の内容を絵や人形などを用いて分かりやすく前もって伝えるプレパレーション(心の準備)を行う医療施設も増えてきました。病気を治すために必要な検査や治療とはいえ、子どもにとっては、検査や治療は身体的な苦痛を与えるのみでなく、心身のストレスを負わせ、時にはトラウマの原因にもなり得ます。

▼そのような環境から再び入院前の学校生活に戻るとき、子どもたちは「やっと家に帰れる。はやく元通りにみんなと一緒に過ごしたい」という思いと、「病気にかかった自分は不完全で、もう元通りにはできないかもしれない」という思いが交錯し、新たな環境に適応するのと同じくらい身体も心にも負担がかかります。そんなときに、寄り添ってくれる家族の存在と、担任だけではない学校全体のサポートがあることが、とても重要になってきます。

▼入院中に院内学級に通級する子どもの退院が決まったときには、ご家族と院内学級の先生、退院後に通学する学校の先生、主治医、看護師、臨床心理士、チャイルド・ライフ・スペシャリストなど多職種のサポートチームが、退院後の子どもの生活について話し合うことがあります。言葉ではなかなか自分の感じていることを表現できない子どもたちの心の声に耳を傾けること、「ここにあなたの場所があること」を伝え、病気があっても安心して学べる場所を提供できるように、教育と医療の連携を日常的に行っていければと思います。

▼ 難病をもつ子どもたちにも楽しい夏の思い出ができますように。

 

(安元佐和)
 
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