Browse
立ち読み  
編集後記  第66巻3号 2018年3月
 

▼啓蟄を迎えようとしていますが、各地で厳しい寒さや豪雪による影響が続いています。インフルエンザの流行も重なり、毎年のことながら、この時期の受験生とその家族の負担はいかばかりかと慮られます。

▼本号の特集1は、我が国の現状と諸外国における子育て支援の比較など興味深い内容になっています。超高齢少子化や情報化社会となった我が国では、これから労働力の減少が進み、働きながら子育てをする家庭が増えてくることでしょう。労働力確保の観点からは、女性が働きやすい環境を整えていく必要があることは間違いありません。
 そして、子育て支援でもう一つ忘れてならないのは、大人に都合の良い社会にする方策ではなくて、“子どもにとっての幸せは何か”といった子ども側の視点であり、そのための子育て支援に必要なことを考えていく必要があります。
 生きていく上で最も大事な土台を築く乳幼児期は、周りの人々からどれだけ愛情を注がれたか、また「心の安全基地」である愛着を結べる人がいるかどうかが重要であり、それは、将来本当の意味で自立した大人になれるかどうかにつながります。

▼日頃接している大学生たちを見ていると、なかなか成績がふるわない学生の中で、「やり抜く力(GRIT)」をもつ学生は、良い意味で根拠のない自信(自己肯定感)をもっています。そして最後まで頑張り抜いて、最終的には良い結果を出し、卒業後も新しい場所で伸びていきます。そのような学生を見ていると、成績順位がどんなに下位に低迷しても、自分を信じる力をもっている気がします。きっとこのタイプの学生たちは、小さい子どもの頃から、親に成績の順番や他の子との比較で認められてきたのではなく、その人の存在そのものが認められ、愛情深く育てられたのだろうと強く感じることがあります。あるがままを認められ育った学生は、ひょうひょうとして、それでいてしなやかで、折れない強さをもち成長し続けます。

▼両親が共働きで子どもと一緒に過ごす時間が少なくても、そんな大人に育ってほしいです。子どもの笑顔は、大人の心のバロメーターです。疲れて帰ってしかめ面で料理をしても美味しくないかもしれません。そんなときは手抜き料理で乗り切り、親子でゆっくりとお風呂に入り、「小学生なんだから、自分でできるでしょう」と言わずに、ちょっとタオルで子どもの頭や体を拭いてあげてください。それだけで、子どもはとても嬉しいはずです。

▼これからは親だけでなく、子どもに関わるすべての大人たちが、物やお金ではない大切な贈り物を子どもたちにたくさん注いでいける社会にしたいですね。ちょっとだけ、大人も急ぎ足を緩めて、子どもの歩みに合わせて周囲を見ると、何か大切なことに気づくかもしれません。そしてたくさんの抱っこをしてあげましょう。大人も子どもも、きっと笑顔になります。

▼ 厳しい寒さの後にも、必ず暖かな春がやってきます。それを楽しみに、それぞれの冬を乗り切りましょう。

 

(安元佐和)
 
ページトップへ
Copyright (C)2004-2019 Keio University Press Inc. All rights reserved.