No.1302(2025年8・9月合併号)
特集
No.1302(2025年8・9月合併号)
特集
三田評論
2025年8・9月合併号表紙
今年3月に逝去された白井厚教授は、晩年義塾の戦争を語り継ぐ事業に尽力された(追想)。記憶はすぐれて個人のものであるが故に、形ある記録に変える努力が必要である。「特集・戦争を語り継ぐ」の座談会は語り継ぐ事柄が、すこぶる多様であることを示している。義塾の研究者が先駆的にはじめ、今日まで続く被爆者調査は、記録することの取り組みであり、戦争遺跡を媒介物とする記憶の継承が日吉台にある。加田哲二の戦時日本との知的な格闘を活写した片山教授の論考、義塾史における戦争研究の特質を語った都倉教授の指摘、ことに学校文化と同時代社会の関係は興味深い。巻頭、横山房子氏の上原三兄弟の追憶、その哀惜の念は極まりない。「話題の人」森裕之氏の気候変動問題へのリアリスティックな姿勢に共感。学部時代の読書経験の述懐と後輩の塾生・塾員へ「自ら調べ自ら考えること」を励行しようというメッセージ、感謝します。
(赤木完爾)
戦後80年の夏――先の戦争の空襲被害は慶應義塾にも深く及び、また日吉台地下壕という戦争遺跡を持つ大学として、さらにかつて学徒兵を戦地に送り出した学校として、「戦争」を語り継いでいくことは重要な営みと考えます。直接の戦争体験者が急速にいなくなっている現在、若い世代を中心にどのように戦争を語り継いでいくのか、また発掘される資料などから、その時代に起きたことをより鮮明に理解することは可能なのか? 問うていく特集です。
森 裕之さん
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)理事・エネルギー事業本部長・塾員
インタビュアー:藤田 康範(慶應義塾大学経済学部教授)
昨年、米国『TIME』誌の「気候変動に最も影響力のあるリーダー100年」に日本人で初めて選ばれた森さん。環境対策に配慮したエネルギーと言えば再生可能エネルギーが注目される中、LNG(液化天然ガス)からメタンをはじめとする温室効果ガスを除去する技術への支援活動が評価されました。地球環境とLNGの両立に努力を続けてきた森さんの軌跡を紹介します。
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。