1.
初夏のハーバード・キャンパス
2. ケンブリッジ情報 (1) 全般的情報
3. ケンブリッジ情報 (2) 研究活動紹介
4. ワシントン情報 (1) 国際関係
5. ワシントン情報 (2) 米国政治
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5.
ケンブリッジ情報 (2) 最近における研究活動の紹介
日本の知人から、よく「米国はどう考えているのですか」、「米国はどう観てますか」と聞かれる時があり、戸惑う時がある。多くの知米家が語るように、米国という一つの視点は存在していないと言っても過言ではない。昨年の大統領選では、スザンヌ・バーガーMIT教授からジャーナリストが書いた本『カンサス州はどうしたの?:
保守派は如何に米国の心を掴んだのか (What's the Matter with Kansas?
How Conservatives Won the Heart of America)』(Metropolitan
Books, 2004)を教えて頂いた。6月14日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「次世代の保守派(それも寮一杯の)
(Next Generation of Conservatives (By the Dormful))」と題し、フリードリッヒ・フォン・ハイエクの経済学を信じ、この夏、ヘリテージ財団の寮に寝泊りする若者達の生活と思想を描写している。こうしてみると、本当に米国政治は難しい。それは民主主義であるが故に様々な考え方の流れができるからであろう。考えてみれば日本もそうであろうし、先の質問に表面上簡単に答えられる国が存在するならば、それは恐らく中国ではないだろうか。
欧州情勢、それに我々の東アジア情勢を考えても、また、米国国内をみても本当に世の中は住みにくい。安全保障問題、歴史問題、経済問題とそれにまつわりつくナショナリズム。丁度一年前に訪れたパリで購入した夏目漱石の『草枕』の冒頭部分を思い出している。「智に働けば角が立つ。・・・
とかくに人の世は住みにくい (A user de son intelligence, on
ne risque guere d'arrondir les angles. . . . Bref,
il n'est pas commode de vivre sur la terre des
hommes.)。」と。漱石も、人間がこの世のどこからも引越しすることもできず、逃げ出すこともできないことを悟った時、心をなごます芸術が生まれると教えているではないか。こうして、美しい音楽と絵画を思い浮かべながら自らを励ましている。小誌前号で筆者自身が"Cambridge
Monk"と呼ばれたことを書いた。親しい友人から、「ところで、セロニアス・モンクはお好きですか。」とメールを頂いた。ケンブリッジに来てまだ聴いていないジャズのCDを思い出し、グラスを傾けながら、また爽やかな木洩れ日のなかで、静かにそれを聴いてみたい気持ちに駆られている。
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