No.1284(2024年1月号)
新春対談
No.1284(2024年1月号)
新春対談
三田評論
2024年1月号表紙
冒頭は、日本人初の女性宇宙飛行士、向井千秋氏と塾長との新春対談。慶應女子高を経て心臓外科医として活躍した向井氏の原点は「宇宙から故郷の地球を見たい」という夢を実現すること。しかし地上ではその夢を壊すような戦争、温暖化、格差社会などの問題が散在している。国連などが機能しない時代、多種多様な人たちがチームを作り、力を結集して事に対処することの重要性を説く。「スーパー国連」の話は向井氏らしい発想。「三人閑談」は『源氏物語』ついて。日本人でも原文で最後まで読んだ人は少ないという林氏の言葉にほっとする人は多いと思う。読めたとしても現代語訳。英国のウェイリー訳に触れながらの雅やかな言葉を巡る鼎談は心に響く。高校生小論文コンテストの5作とも力作。小泉信三賞論文では、福澤の精神に依拠し、AI社会の時代、前提を疑い、的確な判断、議論できる智力を持つ人間の優位性を説く。令和の実学を展開する迫力のある論考。
(伊藤行雄)
本年のトップを飾る「新春対談」は宇宙飛行士の向井千秋さんを迎えて行いました。幼い時から医者になりたいと思い、その夢を実現させただけでなく、持ち前の好奇心の旺盛さから日本人初の女性宇宙飛行士になられた向井さん。その夢に向かう原動力はどこから来るのでしょうか。伊藤塾長の目指す慶應義塾の姿とも共鳴し、またDE&Iの時代を先取りした向井さんの姿は、まさに「慶應義塾の目的」と重なり合うものです。
永井紗耶子さん
作家・塾員
インタビュアー:森重達裕(読売新聞文化部記者・塾員)
『木挽町のあだ討ち』で第169回直木賞、山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子さん。これまで鎌倉時代を舞台とした『女人入眼』(直木賞候補作)や、商人の視点から江戸の経済を描いた『商う狼──江戸商人 杉本茂十郎』(新田次郎賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、細谷正充賞)など、様々な時代背景をもった物語を彩り豊かに綴ってきました。新聞記者、フリーライターを経て、時代小説作家としてキャリアを重ねる永井さんに、創作に対する考えやこれからの意気込みについて聞きました。
1000年前に書かれた『源氏物語』はどうして「世界文学」と呼ばれるのでしょうか。今もなお世界の人たちを魅了し続ける『源氏物語』をはじめて英訳したウェイリーは一体どんな苦心をしてそれを世界に届けたのか。『源氏』そのものの文体と現代日本語訳を含めた「翻訳」の力を味わえる、大河ドラマの合間に読みたくなる閑談です。
〈選評〉大久保健晴・小西祥文・谷口和弘・早川 浩
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。