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沙翁と福翁に学ぶ生きる知恵
 

沙翁と福翁に学ぶ生きる知恵


はしがき

 
 

シェイクスピアの作品ほど民族の壁を超えて広く世界に知られ、舞台にスクリ−ンに或いは読書界に親しまれ、しかも現実社会に様々に係わって来た文芸作品は恐らくないでしょう。それはハムレットが言う様に、シェイクスピアの「芝居が目指すところは、昔も今も自然に対して、いわば鏡をかざして善いものには善い姿を、滑稽なものには滑稽な様子をありのままに映し出して、その時代の特質また本質を余す所無く示すこと」でもあったからでしょう。一方福澤諭吉もまた近代日本の形成期に文明開化への道筋を見極めた先導者として最も大きく貢献した思想家であり、その広く深い人生体験から語られた処世の知恵は今日でも尚人々の胸に響くものがあります。慶應義塾に学び、また三十年程義塾の教職に携りながらシェイクスピアの作品研究に半世紀を過して、いよいよ傘寿を迎えるとなると、沙翁とも福翁とも因縁浅からぬ身として、未熟ながら筆者も沙翁や福翁の言葉を借りて何か自分なりの人生を振り返ってみたくなりました。これなら筆者にとっても処世訓もどき標題が許されるのではないかと考えたわけです。話題が 沙翁や福翁の外にも及んだところがありますが、人生模様はそれだけ複雑多岐に亘るということだと思います。

本書がきっかけとなり、読者が沙翁や福翁の全集に新たな関心を示し、これからの人生に新たな勇気と知恵を得ることが出来れば望外の幸いであります。  

 

著者プロフィール:石川 実 (いしかわ みのる)
慶應義塾大学名誉教授  1927年茨城県に生まれる。

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