『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』上下巻

(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

『ブラックアース』著者、米国イエール大学よりティモシー・スナイダー教授の講演会「ブラックアース-ホロコーストの歴史と警告-」を開催します。

朝日新聞(10月24日、夕刊)「黒い大地をたどって」(1)国末憲人さんによる連載で『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』上・下(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)をご紹介いただきました。 本文はこちら
日本経済新聞(2016年9月4日、朝刊)に『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)の書評が掲載されました。書評はこちら
■【参考情報】(インタビュー)ホロコーストの教訓 米エール大学教授、ティモシー・スナイダーさん(朝日新聞、2016年4月5日より)

『ブラックアース』著者、米国イエール大学よりティモシー・スナイダー教授の

講演会「ブラックアース-ホロコーストの歴史と警告-」を開催します。

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

下記のとおり、『ブラックアース』著者で、米国イエール大学よりティモシー・スナイダー教授をお招きして講演会を開催します。

 

「ブラックアース-ホロコーストの歴史と警告-」


日時:2017年1月12日(木) 16:30~18:00 

    開場16:00
会場:慶應義塾大学三田キャンパス東館8階ホール
    https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html 


問合せ先: (イベントについて) 

         kaken-events@u-sacred-hart.ac.jp 
        (会場・時間について) 

         kgri-office@adst.keio.ac.jp 
その他:通訳がつきます。入場無料・事前予約不要です。


主催:科研基盤研究(B)「異文化交流と近代外交の変容」

    (研究代表者 聖心女子大学・桑名 映子)
共催:慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)


  

 

訳者 池田年穂 氏による特別寄稿「ティモシー・スナイダーが私たちに投げたブイ」

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

昨2015年9月に原著が刊行された『ブラックアース――ホロコーストの歴史と警告』の執筆意図についてスナイダー氏から私信で知らされたのは2014年4月に遡る。「ホロコーストの5W1Hについて最後に残ったもの、Whyを書くのです」「1933年から1945年までのホロコーストのグローバルな歴史的解釈で、ヒトラーについての章から始まり、将来(21世紀)についての章で終わります」。Why を書く? 将来(21世紀)についての章で終わる? 狐につままれたような気がしたことを記憶している。
スナイダー氏の本邦初訳は傑作評伝『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』であったが、スラブ系諸語を含め二桁の言語を解する氏は中東欧やロシアの資料をも自在に利用していた。その語学力と博捜を活かした『ブラッドランド』が続いて訳出され、「ナチス・ドイツとソ連が故意に行った大量殺戮政策の犠牲となった民間人」についての包括的な地図と時系列とが示された。
本書『ブラックアース――ホロコーストの歴史と警告』の我が国での刊行は上下2巻になるが、上巻は卓越した「ヒトラー論」にもなっている。Whyを探るために、氏はまず<ホロコーストの歴史>を追いながら「7つの思い違い」を正してゆく。例えば、ホロコーストはドイツ国外のそれもほとんどは強制収容所でない場所で実行され、犠牲者の大部分はドイツ国外のユダヤ人だったし、加害者の半ばはドイツ人でさえなかったのだ。ウクライナでの2013年末から激化した分裂抗争やロシアのクリミア併合について時事的発言を繰り返すなか、反ユダヤ主義がホロコーストの主因ではないと考える氏は、まずヒトラーの思考に寄り添おうとし、我々が看過しがちな側面に着目するようになる。つまり、ヒトラーにとっては、ドイツの敗北はユダヤ人が「自然」の秩序を支配してしまったことの証しであった。「科学嫌い」の彼は、物理的な生存と生活水準向上のための「生存圏」という強迫観念ゆえに、東方に植民地を求めた。それが頓挫したときにホロコーストは加速されたが、その前提として不可欠だったのは国家と市民の互恵的関係が毀損された「国家のない地域」であった、というわけである。ヒトラーはナショナリストではなく、戦争の勝敗さえも彼にとっては二次的な問題であった。実利性のまったき欠如こそヒトラーの起こしたホロコーストの特異性であり、(ホロコーストを辛うじて逃れたラファエル・レムキンの造語であるにもかかわらず)他の「ジェノサイド」と趣を異にする点である。上巻(及び下巻の初めの2章)で、氏はヒトラーの自然や人種についての独自の理論を、次いで、ホロコーストが起きた、また起こりえた要因を、みごとに解き明かしてみせる。


『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

目から鱗の感のある「換喩としてのアウシュヴィッツ」の持つ陥穽を含め、本書をこれまでにない「ホロコースト論」たらしめている下巻であるが、そのなかでも圧巻は「将来(21世紀)についての章」に相当する終章であろう。<ホロコーストの警告>にあたるものだが、ホロコーストを単なる歴史と観ずに、現代のそして未来の世界という文脈にホロコーストを置いてみせる。氏は、ホロコーストの胎動を既に感じているのである。戦後もジェノサイドは世界でいくつも見られたが、これまでは辛うじて局所的に留まってきた。しかし、ヒトラーが最初のグローバル化の子なら、私たちは第二のグローバル化の子である。第二のグローバル化においては、ジェノサイドの引き金となりうるもの自体がまずグローバル化している。気候変動や公害、人口の急増と生活水準の向上意欲などを背景とする「生存に関わるパニック」は、どれも局所的ではありえないし、また予想される惨禍は、初めは局所的なものであっても瞬時にしてグローバルなものとなる可能性を秘めている。
ホロコーストの再現を阻むためには、国際社会における国家エゴは抑えつつ互恵的な国家機能を正しく保ち、科学を政治に従属しない形で発展させ、また、新たなスケープゴートを生み出さぬよう全体主義を排して多様性を認めることである。20世紀を象徴する ( イーブル ) とはいえ、ホロコーストを記念するだけでは十分でない――理解することこそ肝要である。
本書『ブラックアース ホロコーストの歴史と警告』は、スナイダー氏が私たちに投げてくれたブイなのである。

 

池田年穂(慶應義塾大学名誉教授)


  

 

ティモシー・スナイダーに聞く『ブラックアース』についての11の質問

本書の理解を深める11の質問を掲載しました。スナイダー氏の回答は、質問文をクリックするとご覧いただけます。


  

 

推薦文

ティモシー・スナイダーは、我々にとって、悪<イーブル>についての最もすぐれた歴史家である。ホロコーストが人類の将来に鳴らしている警鐘を、かくも危急のものとしてとらえているホロコーストについての著作を、私は本書の他に知らない。

レオン・ウィーゼルタイアー(ジャーナリスト)

 

 

本書でティモシー・スナイダーは、ヒトラーのジェノサイドを1930年代ヨーロッパの政治と外交の文脈に置くことで、ホロコーストの「知的な起源」を再考している。『ブラックアース』は、歴史における現在の難しい局面を憂慮する誰にとっても、手に取らざるを得ない書である。  

アン・アプルボーム(歴史家)

 

 

ティモシー・スナイダーのホロコーストへの大胆でこれまでにないアプローチは、ヒトラーの人種的世界観を、国家の崩壊や土地と食糧の追求とに結びつけている。『ブラックアース』は、我々の将来を再考する喫緊の必要性をありありと示すべく、そう遠くない過去のおぞましい非人道的行為を有効に用いている。

イアン・カーショー(歴史家)

 

 

歴史書でもあり、政治理論の書でもある『ブラックアース』は、博捜にしてかつ深く考えさせられる「歴史の再解釈」たりえている。

ヘンリー・キッシンジャー(元米国務長官)

 

 

  

 

書店フェア 「未来への警告」フェア開催中!

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

ヒトラーは最初のグローバル化の子であり、我々は第二のグローバル化の子である。20世紀を象徴する悪とみなされるホロコーストの研究は著しい成果をあげたが、5W1HのうちWhyだけは十分な解明がなされなかった。『ブラックアース』でのWhyの考究は、すべてが地球規模の問題となった21世紀に生きる我々への警告にそのまま結びつく。人口70億を超えた地球での生存(エコロジカル)パニックを防ぐために国家をどのように利用するかに、第二のホロコーストは防げるのか、我々の生存は維持できるのか、つまりは未来がかかっているのである。(池田年穂)

 

 

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『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)



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『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻)

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

ヒトラーの世界を目撃せよ

ヒトラーとは何者だったのか ――。
限られた資源、土地、食糧をめぐる生存競争の妄想にかられたヒトラーは、
ポーランド、そしてウクライナの肥沃な土壌(ブラックアース)を求めて侵攻し、
国家機構を完璧に破壊し始める。
ドイツの絶え間ない生存競争を、ユダヤ人の倫理観や法感覚が妨げると考えたヒトラーは、
やがて、人種に基づく世界、ユダヤ人のいない世界を構想し、それを現実のものとすべく実行に移した ――。

前著『ブラッドランド』でホロコーストの歴史認識を根底から覆した気鋭の歴史家が、
ヒトラー「生存圏(レーベンスラウム)」の思想に鋭いメスを入れ、ホロコーストの真因を明らかにする傑作。

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『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(下巻)

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

ホロコーストの胎動を聴け

ホロコーストはなぜ起きたのか ――。
ホロコーストはドイツだけで起きたのか?
実はホロコーストは、その多くが戦前のドイツの国境線の外で起きたことだった。
ホロコーストは強制収容所のみで起きたのか? 
ユダヤ人は、現実には死の穴の縁で殺害されたのが半数にのぼり、
収容所ではなく、特別なガス殺の設備で殺害された。
加害者はすべてナチスだったのか? 殺害に携わったドイツ人の多くはナチスではなかったし、
そもそも殺害した者のほぼ半分はドイツ人でさえなかった ――。

ヒトラーとスターリンの狭間で、完膚なきまでに国家機構が破壊され、
無法地帯に陥ったその地で、一体何が起こったのか。
極限状況における悪(イーブル)を問い直し、未来の大虐殺に警鐘を鳴らす世界的ベストセラー。

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書籍詳細

  上巻 下巻
分野 人文書
初版年月日 2016/07/30
本体価格 2,800円 3,000円
判型等 四六判/上製
320頁 352頁

  

 

著者 ティモシー・スナイダー(Timothy Snyder)

『ブラックアース―― ホロコーストの歴史と警告』(上巻・下巻)
(ティモシー・スナイダー 著、池田 年穂 訳)

イェール大学教授(中東欧史、ホロコースト史)。1969年生まれ。1997年、オクスフォード大学Ph.D.

ハンナ・アーレント賞(2013年)をはじめ豊富な受賞歴を誇っている。東欧をめぐる時事的問題について有力紙誌への寄稿も多い。21世紀に入ってからの主な著作として、The Red Prince: The Secret Lives of A Habsburg Archduke, 2008(『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』、慶應義塾大学出版会、2014年); Bloodlands: Europe Between Hitler and Stalin, a history of Nazi and Soviet mass killing on the lands between Berlin and Moscow, 2010(『ブラッドランド――ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』、筑摩書房、2015年); Sketches from a Secret War: A Polish Artist's Mission to Liberate Soviet Ukraine, 2005.; The Reconstruction of Nations: Poland, Ukraine, Lithuania, Belarus, 1569-1999, 2003などが挙げられる。邦訳されたものとしては他に、Tony Judt with Timothy Snyder; Thinking the Twentieth Century, 2012(トニー・ジャット『20世紀を考える』(聞き手ティモシー・スナイダー)、みすず書房、2015年)がある。

 


  

訳者 池田年穂(いけだ としほ)

慶應義塾大学名誉教授。歴史家、翻訳家。1950年生まれ。ティモシー・スナイダー『赤い大公 ハプスブルク家と東欧の20世紀』、マーク・マゾワー『国連と帝国 世界秩序をめぐる攻防の20世紀』、ジョーン・ディディオン『悲しみにある者』(いずれも慶應義塾大学出版会、2014年、2015年、2011年)、エミー・E・ワーナー『ユダヤ人を救え! デンマークからスウェーデンへ』(水声社、2010年)など多数の訳書がある。


  

 

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