No.1288(2024年5月号)
特集
No.1288(2024年5月号)
特集
三田評論
2024年5月号表紙
特集は「大学発スタートアップの展望」。大学は研究と教育が社会的使命であることにに異論を挟む人はいない。だが大学の社会的貢献とは何なのか。卓越した論文を書き学会や世間で評価されるだけが大学、大学人なのかと問われる時代。スタートアップは、いわゆる「実学」の言葉に相応する。資金、人材など課題も多いはず。だが大学の将来にとって重要な挑戦だ。異論反論はあると思うが、慶應がその先頭に立つことは将来の大学像を見据える上でも大事な課題。「三人閑談」は都市の自然の新たな見方をカワセミの例を通して披露してくれる新鮮な鼎談。コンクリート三面張りの河川や都会の緑地に数多くの鳥や魚が戻っている。都会のなかのコンクリートの護岸の川をのぞき込んで魚を探すのは地方の清流を眺める以上に筆者は興味深い。『慶應義塾図書館史II』が発行された。『図書館史I』と比して全キャンパスを対象とした視点から編纂された貴重な資料。
(伊藤行雄)
今、ディープテックを活用した大学発のスタートアップへの期待が急速に高まり、官民挙げて様々な起業支援の仕組みをつくっています。大学の先端的な研究から生まれるシーズ(種)をいかに社会の役に立つ形で実装化していくか。社会課題の解決や社会貢献がかつてないほどに大学に求められている今、一つのソリューションとして欠かせないスタートアップの特集です。
翁 百合さん
政府税制調査会会長、日本総合研究所理事長
インタビュアー:寺井公子(慶應義塾大学経済学部教授)
本年1月に女性では初となる政府税制調査会会長に就任された翁さん。エコノミストとして長い経験を積まれ、政府の委員を多数経験されてきたその軌跡を見ると、まさにふさわしい人がリーダーに選ばれたという感がします。塾での経済学の学びこそが物事を見る際の切り口になっていると語る翁さんに謙虚さと静かで強いリーダーシップを感じました。
近年、都心の河川でもカワセミを見かける機会が多くなっています。以前は水質汚染などによりすっかり都市の河川から姿を消したカワセミですが、水質の改善とともに急速に“都市鳥”となり、都心に回帰しているのです。それはなぜか? 都市の生態系の急速な変化がかつてとは違う鳥たちの行動を呼び起こし、多様な生物がそこに棲みついている。その事実を知ると飛翔するカワセミの見方が変わるかもしれません。
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。