No.1276(2023年4月号)
特集
No.1276(2023年4月号)
特集
三田評論
2023年4月号表紙
特集は「投資は社会を変えるか」。政府が促す言葉「貯蓄から投資へ」には一般国民の金融リテラシーを高めることへの視点はない。低所得、低年金の時代に安全策を取るのは当然のこと。しかし社会貢献や寄付行為への投資には国民は好反応を示しているようだ。投資はイノベーションを生み、世界を驚愕させる「モノづくり」に直結することが大事。福澤先生(『学問のすゝめ』)と近代の翻訳文化の講演録。欧米の言葉の翻訳語の作成に、漢語に創意工夫を凝らした先達者たちの苦労話は計り知れない。福澤先生が古来「思い通り」の意で使っていた「自由」を文化的意味からlibertyにあてた点は、既存の意味を刷新した翻訳語の一例。司馬遼太郎を扱った「三人閑談」は、時代を知る上でも深みのある鼎談。アカデミズムの史実は学術的に重要だ。登場人物は司馬の独自の「語り」によって再現される。その読み方は読者の自由。支持者が多いのは作品が魅力的だから。
(伊藤行雄)
「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズは、何か突然出てきたようにも思われ、考えさせられます。老後の資金が足りないから投資を促すのか? 日本人は本当にもっと投資をすべきなのか? 単に利殖のためではなく、よりよい社会にするためのお金の流れもあるのではないか? 本特集では様々な角度から広い意味での投資に着目し、新しいお金の流れを考えていきます。
徳川家広さん
第19代徳川宗家当主・塾員
インタビュアー:井奥成彦(慶應義塾大学文学部教授)
大河ドラマ「どうする家康」や漫画・テレビドラマ「大奥」の人気で、今再び、徳川家康や江戸時代への関心が高まっています。本年1月1日に徳川宗家の第19代当主となった徳川家広さん。家督を継ぐとともに、徳川記念財団の理事長として情報発信にも力を入れています。伝統を継承することへのお考え、社会的責任や徳川家のこれまでとこれからについて話を聞きました。
大ベストセラー作家、司馬遼太郎が生誕100年となる年を迎えました。『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『燃えよ剣』などの著作は非常に多くの人に読まれ、歴史に関心を持つきっかけとなった方も多いのではと思います。一方、その歴史観は議論を呼ぶことも多くありました。このメモリアルイヤーを機に、国民作家を再考する、白熱の閑談です。
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。