No.1264(2022年3月号)
特集
No.1264(2022年3月号)
特集
三田評論
2022年3月号表紙
希望を持たせる脳科学特集。しかし、巽孝之の「さまよえる電脳」に未来への不安が。脳は体重の数パーセントでありながら2割以上のエネルギーを消費する。また、少なくとも同等量の脳を持っていたネアンデルタール人に人類が競り勝てたのは、小脳がわずかに大きかったかららしい。その脳が自滅兵器を開発した。脳は自省もできるはず。「時の話題」にフェムテック。リウマチも女性が男性の4倍も発症しやすく、進行すれば関節の痛みで排尿動作にも難儀する。筆者は20年近く前にこの実態に気づいた看護教員を支援し、企業の協力も得て痛まず間に合う便器と下着を開発した。生理現象に関わる製品開発は実測の困難さを伴う。筆者自身が術後の失禁量を数ヶ月間測り続けて作成した減少曲線は看護の教科書に採用された。希望が持てれば今の不快も乗り越えられる。「セルフビルド」には法律の制約も大きいと知る。國廣純子の「地域協同」は地域活性化の希望に。
(山崎信寿)
アバターを介して人と交流する「メタバース」が話題になり、脳に損傷を負った人を支援するテクノロジーが注目を集めるなど、「脳科学」と呼ばれる領域の研究が盛んです。人間の一器官でありながら、まさに学際的、文理両領域の知見が必要となる脳の研究は、総合大学の様々な場で育まれ、社会実装へ結び付けられつつあるようです。慶應義塾の気鋭の脳科学研究者に最前線の研究を語っていただきました。
波多野睦子さん
東京工業大学工学院電気電子系教授、応用物理学会会長・塾員
インタビュアー:小尾晋之介(慶應義塾大学理工学部機械工学科教授)
慶應義塾で学び、東工大工学部で初の女性教員となり、応用物理学会会長の職を務める波多野さん。様々な分野を軽やかに横断し、常に社会に役に立つ研究を心がけているその姿勢には、実学の精神が息づいています。ダイヤモンド量子センサーの研究者として、そして教育者としてポジティブに学生を励まし続ける姿に技術立国日本の未来が見えてくるかのようです。
合理性を追求することで発展を遂げた日本の建設業。それと逆行するように、今密かな注目を集めるのが「セルフビルド(自力建設)」です。タワークレーンが聳える建設現場の風景とは対称的に、限られた人手でコツコツと建物をつくり上げる挑戦には、現代社会から失われつつあるものづくりへの熱い思いが窺われます。建てることの楽しさや難しさにそれぞれ向き合ってきた“セルフビルダー”たちの建設談義に耳を傾けてみました。
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。