平成22年12月25日、「伊達直人」を名乗る人から群馬県中央児童相談所へランドセル10個が送られたことをきっかけに、翌年1月にかけて、全国各地の児童養護施設等へ寄付行為が相次ぎました。これらの行為は、「伊達直人」が漫画『タイガーマスク』の主人公で、自らが育った施設へ素性を隠して寄付をする人物名と同じであることから、「タイガーマスク運動」と呼ばれるようになりました。
この運動が政府を動かし、平成23年1月末、厚生労働省は児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会を立ち上げ、社会的養護専門委員会と両輪で社会的養護の推進が図られることとなりました。この改革は、関係者の間で「改革の三段ロケット」と呼ばれています。できることは段階的に実施し、最終的には、子ども・子育て新システムと同様、いわゆる政府における税と社会保障の一体改革による財源の確保を念頭に、次々と打ち上げロケットを用意するものです。
第一弾ロケットであるすぐにでもできる改革は、本年4月1日付をもって実施に移されました。実施要綱の改正、通知の発出では、(1)小規模グループケアの推進、(2)地域小規模児童養護施設の推進、(3)児童家庭支援センターによる里親、ファミリーホーム支援、(4)自立援助ホーム、ファミリーホーム(立ち上がりの半年間)の定員払いの実現、(5)自立支援のための身元保証人確保対策事業の充実、(6)雇用均等・児童家庭局長通知「里親委託ガイドライン」などがあります。これらは、家庭的養護、自立支援の推進をめざしています。
続いて、同年4月に成立した「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づく児童福祉施設最低基準の地方移譲に対応するため、居室の児童人数、児童1人当たりの居室面積、職員配置基準などの最低基準をかさ上げすることがあります。運営の理念等についても、現状に沿う改正が行われています。これは、平成23年6月に児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令として施行されました。さらに、東日本大震災における震災孤児対策を契機として、親族里親のうち、叔父・叔母を養育里親として里親手当の支給を行う制度改正も検討されています。
第二弾ロケットは、来年度からの実施をめざします。社会的養護の課題と将来像を検討したうえで、順次実施に移していきます。平成24年度から施行される民法等の一部を改正する法律に対する対応も重要です。施設長の研修義務化と資格要件の設定、第三者評価の義務化等が考えられています。なお、課題と将来像の検討については、厚生労働省ホームページから前述の検討委員会の会議資料等で見ることができます。その中には、来年度予算案に反映する事項も含まれています。各施設種別の職員配置基準の充実や大学進学費、就職支度費等の自立支援費用の増額などは是非とも一歩前進したいものです。その他、施設や里親、ファミリーホームの運営ガイドラインの作成も企画されています。
最後の第三弾ロケットでは、今後、子育てに一定規模の財源が充当されることをめざし、子ども・子育て新システムの実現とともに、社会的養護の充実を図ることをめざします。社会的養護の質・量の拡充、職員配置基準の拡充や家庭的養護(里親等委託を社会的養護の3割以上にすること、施設の小規模化等)、自立支援の推進などが考えられています。タイガーマスク運動に感謝しつつ、これらのロケットを次々と打ち上げていくことで、社会的養護の充実、地域化と専門化を進めていくことが必要とされています。
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