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編集後記  第58巻7号 2010年7月
 

▼「話し合い・学び合い」による授業が文科省の方針として打ち出されて以来、現場の教師はいろいろな研究会・実践研修会などを通して、いかにそれを現行の教育実践の中に取り入れるかにかなり苦労されているのではないだろうか。というのも、これまでの学校教育では、基本的には従来どおりの知識伝達型の教授学習が主流であった。では、いかに実践に取り込んだらいいのか。今回の特集2は、現場の先生たちのそうした思いに応えるために組んだものである。

▼もっとも、対話型(教師―生徒のやり取り中心)や話し合い型(教師―生徒―生徒のやり取り中心)の授業が、常にそしてどのような場合でも優れていると言うつもりはない。むしろ適切に使い分けられることが肝要である。話し合い型が重視されるようになった理由の一つは、今までの学校教育があまりに知識伝達型教授法に偏重していたからである。教師は、対話型・話し合い型教授法をもっと臨機応変に使い分け、導入できる技能を身につけることが求められている。

▼では、どうしたらいいのか。確かに、それは一朝一夕に身につくものではない。話し合い型授業は、準備に時間がかかる。というのも、教師は、教材について自分なりの理解をかなり深めておく必要がある(子どもたちの意見がどの観点から飛び出すかもしれないし、それらをどのように受けとめ整理し、まとめ、あるいは新しい方向へと展開させられるかは、教師の思考・知識の柔軟性や感性にかかっている)。教科の内容の予定どおりに授業を進めるためには、教師は同時にいろいろな側面(自己・生徒たち・時間経過・教育計画など)をモニターし制御・管理する能力が求められる。そのような側面も含め、この教授法を教える教師プログラムや研修、教育支援プログラムの開発が望まれる。

▼そして、教室での授業をもっと「おもしろい、生き生きした授業」にし、生徒が主体的に思考し関わる学びの場にしていく必要があるのではないか。そこでの教師の役割は、子どもたちの教材への自由な反応(感情、考え、想像)をひろい、それを膨らましたり焦点化したり、複数の意見を対比したりまとめたり、分類したり整理したり、対象化したりのめり込んでみたりすることだ。生徒の考えや気持ちを尊重しそれらを最大限に引き出し、そこで他の仲間のそれと比較・照合・吟味することで、より創造的に深化・展開させられるよい学びの場を作り保証してあげることだ。

▼こうした授業では、「自分の考えや気持ちを大切にし、自分なりに考える」「と同時に、人の意見もしっかりと傾聴し尊重する姿勢を学ぶ」「自分とは異なる考えの人と一緒に、同じ問題・課題について徹底的に議論し合う」など、「話し合い」型の学習法でしか得られない学び、「人と一緒に話し合い学び合いつくり上げていく」体験を実地にすることができる。こうした「学びが真の意味で血となり肉となる」教授法が、学校教育の中に根づくことを心より期待したい。

 

(加藤和生)
 
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