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軍事と公論

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A5判/上製/336頁
初版年月日:2013/07/31
ISBN:978-4-7664-2054-8
(4-7664-2054-3)
Cコード:C3031
定価 6,380円(本体 5,800円)

軍事と公論
― 明治元老院の政治思想
書評 目次 著者略歴

何のための、誰のための「国民皆兵」か?

 「好むと好まざるとにかかわらず、軍事は政治の不可欠な要素である。軍事を無視、軽視した政治論は、必ずどこかに大きな欠落を抱えざるを得ない。素人は素人なりに――軍事趣味とは全く別の形で――専門家に抗してでも軍事について考察し、語る必要がある。そして、その営みを意味のあるものにしていく方法は、実はいくらでも存在している」(本書「はじめに」より)。
 著者はその実例を、明治政府の議法機関・元老院(明治8〜23年)の会議記録に探り当てた。明治軍隊の完成にいたる三度の徴兵令大改正時、政府の片隅では、徴兵制と軍隊の正当性、そして国家のあるべき姿が大胆に問い直されていたのである。
 佐野常民、河野敏鎌、柳原前光、福羽美静、津田真道、加藤弘之、神田孝平、三浦安、箕作麟祥ら、年齢も出自も知的背景も異なる議官たちは、持てる資源を総動員して政府のおしすすめる軍隊建設の前に立ちはだかった。ある者はオルタナティブを示そうとし、ある者は骨抜きにしようとし、またある者は法に服せしめようとしたのである。それらの議論――すなわち「公論」――は、元老院の政治的な敗北にもかかわらず、確かに顧みるに値する。
 本書は、日本史上もっともラディカルかつ多様に軍事について考察し、議論した元老院議官たちの政治思想を「国民皆兵」の観念を軸に追い、政治と軍事との境界線に関わる問題群を体系的に描き出す力作である。

書評

日本思想史学 第46号(2014年9月)に書評が掲載されました。評者は、中野目徹(筑波大学教授)氏です。
読売新聞 2013年9月15日付「本よみうり堂」欄で紹介されました。評者は田所昌幸氏(国際政治学者・慶慶応大教授)[本文はこちら]

目次

凡例
はじめに

第一章 「護国ノ義務」論争
 第一節 「国民皆兵」の理念と「公論」―元老院以前―
 第二節 「国民皆兵」への困惑
 第三節 「護国ノ義務」論争
 第四節 元老院憲法草案と「護国ノ義務」
 第五節 徴兵告諭の三つの論理
 第六節 人権宣言を通して徴兵告諭を読む
 第七節 抵抗の条件

第二章 軍隊観の角逐
 第一節 兵役の平等と「苦役」の緩和
 第二節 兵隊教練案をめぐる対立
 第三節 財政難の軍事構想―佐野常民の場合―
……

著者略歴 著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。

尾原 宏之(おはら ひろゆき)
政治思想史研究者、立教大学非常勤講師、フリーランス・ライター。
1973年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。NHK勤務を経て、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。元首都大学東京都市教養学部法学系助教。
著書に、『大正大震災――忘却された断層』(白水社、2012年)がある。

定価6,380円 (本体:5,800円)
品切・重版未定
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