教員免許更新制が平成21年度から本格実施された。中央教育審議会が答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月11日)を出すまでに教員養成部会のなかでも最終的には腹を据えて更新制導入に賛意を示した委員も存在したといってよい。
更新制についてはマスコミのみならず、学校・大学関係者からもマイナスイメージで受けとめられていた。不適格な教員を排除することをこの制度は目的としているのではないかという疑念である。適格性に欠ける者については、むしろ指導が不適切な教員に対する人事管理システムや分限制度の運用により対応することが適当と位置づけた。
教員養成、免許制度のあり方の基本的スタンスとして、教員養成部会のいずれのメンバーも、日頃から努力する教員を励まし、支援することを命題としていたのは確かである。このスタンスのもと課題の複雑化・多様化に直面している公教育に対して国民の期待に応えるためにも、教員免許制度を免許状の授与段階だけでなく、取得後もその時々で求められる教員(国・公・私立)として必要な資質・能力を担保する制度として再構築することが期待されたのである。
このような発意は、教員免許更新制の先導国家であるアメリカにおいてすでに1930年代当初、終身免許状廃止の論理でもあった。長期間有効の免許状は教員の職能成長(professional growth)を損じるという危機感である。デマンドサイドである子どもの教育活動への専門性加算というプラス思考で、更新制を受講者相互が啓発してほしい。
平成21年3月までに大学を中心に360機関の計7,743の講習が認定されている状況により、今後も増加が予測される。講習開設者にもできる限り質の高まりに向けた講習内容が期待されてくる。平成20年度の予備講習で提示された課題を踏まえて、講習内容、指導形態、指導方法、修了認定の方法等について自己点検を図ることは必要である。例えば以下の点に留意すべきであろう。
第一に、特に必修領域(教育の最新事情に関する事項12時間)については、校種別(幼・小・中・高・特別支援)、年代別、キャリア別の講習とともに、レベル別の設定も考慮する場合もある点である。また受講者数からみて、効率性と個に応じた指導工夫のバランスを生じることもあり得る。
第二に、受講者の最大関心事であろうが、修了(履修)認定のあり方である。仮に不認定の科目があっても繰り返し受講は可能であるし、更新の要件を満たさないことが生じたとしても再授与の道が開かれていることは意外に知られていないのではなかろうか。ただし、修了(履修)認定の基本的方針、試験の形式等を実施要項やオリエンテーションの際に明確に提示しておくことは不可欠であろう。つまり、科目ごとに難易度、分量、試験時間、評価基準に過度な差異がみられることは受講者に不安感を増長させることになる。むしろ受講者の実践を踏まえた課題解決型の筆記試験などを施すとともに、公平性・客観性・納得性を得られるよう、複数の関係者による評価のあり方も求められる。
第三に、受講者からの講習事前・事後アンケート結果のすべてを講習内容や運営に反映させることは困難であろうが、その結果を改善方策に活用する前向きの姿勢は期待されてくる。更新講習による波及効果として本来の教職課程の指導内容・指導体制・指導方法の改善とともに学校教育活動の活性化、校内研修における共通課題認識への高まりである。力量のある教員の養成、個々の教員の能力・適性・経験等に応じた現職研修へのモデル的役割は可能であるという自信を大学側が持とうではないか。
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