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立ち読み  
編集後記  第56巻1号 2008年1月
 

▼国際情勢は、相変わらず緊張関係が強い状態が続いています。イラクやアフガニスタンでのテロはまだ続いており、治安は不安定です。中国、インドがめざましい勢いで経済発展していますが、環境汚染、地球温暖化が影の部分として問題になっています。地球温暖化に取り組んでいるゴア氏が、2007年のノーベル平和賞を受賞しました。
 日本は、経済情勢が改善してきていると言われていますが、格差社会は確実に大きくなっています。自殺者は9年連続3万人以上です。そして医療、年金などが最重要課題となってきています。また、相変わらず連日のように汚職、殺人、虐待などがマスコミで報道されています。これらのことから、非常に不安定な社会になっていると思われます。また、医療関連では医師不足、医療事故、医療訴訟が問題となっています。
▼このようにストレスの多い毎日ですが、疲労や不眠などを訴える半健康状態の人が多く見られます。ストレスは視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などの五感を介して中枢神経系(脳)に影響を及ぼし、脳からは自律神経系、内分泌系を介し全身の各臓器に影響を及ぼしています。ストレスによって不安、怒り、悲しみなどの感情の反応が起こり、これらの心の状態は身体状態にも影響を及ぼします。これらの心身の反応として疲労、食欲不振、発熱、不眠などがあります。
▼ストレスへの対処は、まずストレスを自覚し、原因を明らかにして自分で対処できるかどうかを見極めることであり、家族等の支持も重要です。そして(1)ストレス場面を避ける、(2)避けられないときは適度に発散する、(3)ストレス耐性をつけることです。
 ストレスは長引かせないことが重要です。発散やストレス耐性のために、自分に合ったリラクセーション(心身ともにのびのびとゆったりとし、ストレス状態から回復すること)法を身につけることです。また、リラクセーションができるためには、環境、特に家庭の役割が重要と思われます。家庭の不和などのために、家庭の中でリラックスできない場合、ストレスが持続し、いろいろなストレス病が生じることにつながります。ストレスは弱いところに現れるといいますが、夫婦の問題が子どもの病気として出てくることによく遭遇します。心身症や慢性疾患などの場合は、心理社会的因子、特に、家庭的側面もとらえることが大事になります。家庭に問題がある場合には、家族療法や環境調整を行うことが必要です。
▼今月号のテーマは、「読書離れにいどむ」「教師の学びを支援する」です。携帯電話やインターネットの普及などで読書離れが進んでいると言われています。出版業界も大変な時代になってきています。また、学校の先生の心身の健康も問題になっています。教師の学びを支援することも大変重要です。この度興味ある特集号ができました。
 2008年度は明るい話題がでてきて、ストレス時代をうまく乗り切っていただければと願っています。

(久保千春)
 
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