井筒俊彦全集完結記念講演会
未来に向けての井筒俊彦
主催:慶應義塾大学言語文化研究所 共催:三田文學会 後援:慶應義塾大学出版会

当シンポジウムは、盛況のうちに終了しました。お申込み・ご参加いただきました皆さまにおかれましては、誠にありがとうございました。
本講演会のチラシはこちら(PDF)。

 

「未来に向けての井筒俊彦」

 井筒俊彦はその晩年、心の故郷として日本とアジアの思想風土を強く意識しつつ、「東洋哲学」の構築を目指した。本企画はインドを出発点に中国、そして近現代の日本へとアジアを横断しつつ、井筒の「東洋」の思想と学問の、精神的根源へ向かう旅の軌跡を探るものである。

野元 晋(慶應義塾大学言語文化研究所教授)


  

 

開催概要

日時 2016年9月24日(土)13:00開演(12:30開場)~17:00終演予定(終了しました。)
会場 慶應義塾三田キャンパス 南校舎ホール(東京都港区三田2-15-45)[アクセスマップ]
参加費 無料
お問い合わせ 慶應義塾大学出版会 営業部 Tel. 03-3451-6926
主催 慶應義塾大学言語文化研究所
共催 三田文學会
後援 慶應義塾大学出版会

  

 

講演「意味論としての井筒・東洋哲学」

井筒俊彦全集完結記念講演会「未来に向けての井筒俊彦」澤井義次(さわい よしつぐ) 

井筒俊彦先生はイスラーム思想ばかりでなく、東洋の哲学伝統を意味論的に「読む」ことによって、独自の「東洋哲学」を構想されました。講演では、井筒先生ご夫妻との思い出などにも触れながら、意味論としての井筒・東洋哲学とその構造について考えてみたいと思います。

 

澤井 義次(さわい よしつぐ) 
 1951年生まれ。天理大学人間学部長・宗教学科教授。『井筒俊彦全集』編集委員。専門分野は宗教学・インド学・天理教学。天理大学宗教学科を卒業後、東北大学大学院を経て、ハーバード大学大学院(宗教学)へ留学。Ph.D.(ハーバード大学)、博士(文学)(東北大学)。現在、宗教倫理学会顧問、日本宗教学会常務理事などを務める。日本宗教学会賞や東方学会賞を受賞。
 主要著作に、『シャンカラ派の思想と信仰』(慶應義塾大学出版会、2016年)、『出家遊行者とスマールタ派在家者の信仰』(英文著書、ウィーン大学出版会、1992年)、『聖者たちのインド』(共著、春秋社、2000年)、『根源へ―思索の冒険―』(共著、岩波書店、2004年)、『宗教史とは何か(下巻)』(共著、リトン、2009年)、『天理教人間学の地平』(天理大学出版部、2007年)、『天理教教義学研究』(天理教道友社、2011年)などがある。

 

  

講演「井筒俊彦の起源――『言語と呪術』をめぐって」

井筒俊彦全集完結記念講演会「未来に向けての井筒俊彦」安藤礼二(あんどうれいじ)

若き井筒俊彦は独創的な言語学の体系を築き上げた。西脇順三郎の詩学と折口信夫の古代学、さらには自身の哲学発生論(『神秘哲学』)、宗教発生論(『マホメット』)、文学発生論(『ロシア的人間』)の最も実り豊かな総合として、英文著作『言語と呪術』(1956年)のもつ可能性の諸相を論じたい。

 

安藤 礼二(あんどう れいじ)
1967年東京生まれ、多摩美術大学美術学部准教授。早稲田大学第一文学部卒業。2002年、「神々の闘争――折口信夫論」が群像新人文学賞優秀作に選ばれ、文芸評論家としての活動をはじめる。主な著書として、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した『神々の闘争 折口信夫論』(講談社、2004年)、大江健三郎賞と伊藤整文学賞を受賞した『光の曼陀羅 日本文学論』(同、2008年)、角川財団学芸賞とサントリー学芸賞を受賞した『折口信夫』(同、2014年)など。また、若松英輔との編著書として『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』(河出書房新社、2014年)がある。

 

  

講演「井筒俊彦と老荘思想」

井筒俊彦全集完結記念講演会「未来に向けての井筒俊彦」中島 隆博(なかじま たかひろ) 

井筒俊彦はSufism and Taoism: A Comparative Study of Key Philosophical Conceptsや、『老子』の英訳からもわかるように、老荘思想をその比較思想研究の有力な参照項としていた。ここでは、鈴木大拙との関係にも触れながら、井筒にとっての老荘思想の意義が何であるのかを、神秘を軸に考察する。

 

中島 隆博(なかじま たかひろ) 
東京大学東洋文化研究所教授。東京大学法学部卒業。同大学院人文科学研究科・中国哲学専攻修士課程修了、博士課程中途退学。中国哲学と比較哲学を専門とし、最近は中国の儒教復興運動や普遍論争を主に研究している。編著書に、『コスモロギア――天、化、時』(法政大学出版局)『悪の哲学 中国哲学の想像力』(筑摩書房)、『共生のプラクシス 国家と宗教』(東京大学出版会)、『荘子 鶏となって時を告げよ』(岩波書店)、『ヒューマニティーズ 哲学』(岩波書店)、『残響の中国哲学 言語と政治』(東京大学出版会)等。

 

  

講演「井筒俊彦の哲学的遺物――形而上学としての和歌」

井筒俊彦全集完結記念講演会「未来に向けての井筒俊彦」若松英輔(わかまつ えいすけ)

最晩年、井筒俊彦は司馬遼太郎との対談で、ある時期、和歌における意味論の探究に本腰を入れて取り組もうとしたことがあったと語り、親友でもあった池田彌三郎には万葉集で取り上げられている「色」を視覚的に再現してみないかと共同研究を呼び掛けた。
井筒にとって和歌は、単に詩歌の一形式だったのではない。日本における哲学の源流であると感じられていた。井筒俊彦が行ったことではなく、彼が試みようとしながらも実現することができなかった、哲学的「遺物」をめぐって考えてみたいと思います。

 

若松 英輔(わかまつ えいすけ)

批評家。1968年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて、第14回三田文学新人賞評論部門当選。2016 年「叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦」にて第2回西脇順三郎学術賞を受賞。主な著作に『井筒俊彦 叡知の哲学』(慶應義塾大学出版会、2011)、『死者との対話』(トランスビュー、2012)、『吉満義彦 詩と天使の形而上学』(岩波書店、2014)、『生きる哲学』(文藝春秋社、2014)、『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会 、2015)、『悲しみの秘義』(ナナロク社、2015)、『イエス伝』(中央公論新社、2015 )、『内村鑑三「代表的日本人」』(100分de名著テキスト、NHK出版、2015)など多数。

 

  

 

井筒俊彦全集(全12巻+別巻)