こころとからだを科学する
教育と医学
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編集後記
第53巻3号 2005年3月
▼「教育と医学」の編集会議は、月一回、福岡市内で開催されます。安藤延男会長を中心に十名あまりの編集委員が集まって、特集のテーマにふさわしい執筆者を選考するのです。編集委員には、教育、心理、医学、看護、福祉等々、様々な分野の専門家が揃っていますから、一つのテーマに対して色々な見方が出てきます。テーマを様々な角度から考えてみようというのが編集会議のポリシーのように思います。したがって、各編集委員が推薦する執筆者の候補もバラエティーに富んでいて、特定の見解や主張に偏ることはありません。ある候補者に執筆を依頼するのが適切かどうかで異論が飛び交うこともあります。こうして毎回、十名前後の執筆者を決めていきます。自分の専門以外の領域における動向や話題を教えられることもしばしばで、編集委員自身も学ぶことの多い機会です。
▼編集会議は、会食を楽しみながら和気藹々とした雰囲気のなかで進行します。時に時事問題に触れて激論が戦わされることもありますが、いたって和やかな集まりです。翌月の編集会議で検討する特集のテーマを決めるのもこの時です。およそ半年先に出版される号の特集ですから、その頃の歳時を考えます。一月号ですと年頭にあたって展望となるような包括的なテーマを、四月号は新入生、新入社員に関する特集を、そして六月号では健康問題を…というような具合です。常に今読者が最も知りたいことは何かを考えながらテーマを選びますが、一時的なトレンドに流されないように心がけています。少年犯罪のようなセンセーショナルにマスコミが騒ぐ話題を安易に扱うことは避けています。それに今日、こころや教育の問題にフォーカスをあてた雑誌は他にも多く発行されていますので、他には追随できない「教育と医学」らしい姿勢を貫きたいと念じています。それはやはり、互いの連携が不可欠と考える「教育」と「医学」の専門家が集まって編集している点に最大の特色があるように思います。
▼編集会議は連想ゲームのようなところがあります。今月号の特集のテーマは「恥」についてですが、編集会議の席上、教育に関連したキーワードとして、しつけ、規範、羞恥心等々を挙げていくうちに、誰かが「日本人は恥を忘れたのか。恥を知れ、恥を」と言いだしたことがきっかけです(酔っていたわけではありません、念のため)。こうした近頃あまり耳にしなくなったテーマをあえて取り上げることで、私たちが抱えるこころや教育の問題に対する視点が展開するのではないだろうかと考えます。「教育と医学」の読者は、教育に関した特集に強く関心があるようです。学校教育の現場に携わっておられる方々が多いからだろうと察します。これからも教育をめぐる諸問題を特集に組む予定です。
▼先ごろ、本誌はメールマガジンも開始しましたので、取り上げてほしいテーマがありましたら、ぜひ編集部宛てにお寄せください。
(黒木俊秀)
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