こころとからだを科学する
教育と医学
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編集後記
第53巻1号 2005年1月
▼二〇〇四(平成十六)年のアテネのオリンピックでは、今までになくメダルの数が多く、私どもの気持ちも高揚しました。しかし、全体的にはあまり良いニュースは入ってこなかったように思っております。
▼二〇〇四年は例年の三倍を超える台風がわが国に上陸し、全国的に多大な損害を与えました。また同年十月には新潟県中越地震が発生し、私どもの想像を超える甚大な被害をもたらし、多くの人の犠牲も報告されました。特にこの地震では「心的外傷後ストレス障害」など、子どもたちへのこころの影響が心配されます。一九九五年の阪神・淡路大震災でも、児童精神科や小児科の領域では、同じような問題が注目され、それへの対応が求められました。
 今月号に掲載していますリレー連載・編集委員の目「災害ストレスと心のケア」はまさにタイムリーな一文であり、ぜひ目をとおしていただければと思います。
 懸命に避難生活に耐えておられる新潟県中越地震の被災者の皆さんの様子が、編集後記を書いているこの時期に報道されています。寒い雪の中で罹災した子どもたちのことを考えると心が痛みます。一刻も早い復興を祈らずにはいられません。
▼また、二〇〇四年は日本子どもの虐待防止研究会の第十回目の学術大会が福岡で開かれました。虐待に関係する行政、法曹、教育、医療など多方面の努力により、いままで表に出てきにくかった事例を早く発見し、虐待される子どもたちを早期にケアするシステムは、全国的にずいぶん整備されてきました。しかし、虐待の数は増加しつづけてきています。これからはこれを予防するために教育をはじめ社会全体を変えていかねば、虐待の増加に歯止めをかけることはむつかしいと、この大会を主催するにあたって実感させられました。
▼さて二〇〇三年は「教育と医学の会」が発足して満五十年を迎え、また「教育と医学」も五十一巻六号で通巻六〇〇号を発行しました。六〇〇号を記念してこれまでの半世紀の軌跡とこれからの展望について特集を組みました。また二〇〇四年の一月号ではこれからの医療の展望について特集を組みました。
▼今月号では、「教育と医学」の本来の目的のひとつである「教育」と「医療」の連携について特集しました。それぞれの領域の問題点を考え、今後の進むべき道や方向性をその分野のエキスパートに論じていただきました。
 読者諸氏も「教育と医学の連携」という目で自分たちの周囲にある問題点を考え、これからの進む方向を考えるきっかけとなれば、編集委員の喜びであります。
(満留昭久)
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