【関 連】 実 践 例
『ことばの力を育む』を使った授業の他に、次のような授業が行われているようです。 ご報告いただいた内容と併せて、大津先生からのコメントを掲載しました。
「ことばのきづきを与える授業実践」 報告者:中高英語塾講師 岡田順子
1. 目的 ことば(英語)の仕組みを単語レベルで生徒に気づかせ、その仕組みを 使ってことばを創造的に使わせてみる。 2. 授業の狙い 英語の語彙を増やす工夫のひとつには、接頭辞接尾辞の知識が必要となる。 しかしながら、接頭辞接尾辞の知識は非常にとぼしい。 ここでは、生徒とのやり取りの中で、接尾辞lessの性質と意味に気づかせ、創造的に—less を使い、[名詞+less] という単語のしくみを定着させる。 3. 対象 中学3年 4. 実際の授業展開 「接尾辞を教える」 ホワイトボードに日本語で「ホームレス」と書きます。 「ホームレス、ということばはもし2つにわけるとしたら、どこでくぎる?」 と生徒にききます。 「”ホーム”は家だから、”ホーム”と”レス”かなあ」 というやや半信半疑な答えが返ってきます。 「じゃあ、ホームレスってどんな人のこと?」と問いかけます。 「家のない人にきまってるじゃん」と答えが返ってきます。 「ホームは"家”だったよね、じゃあ、レスはどういう意味?」 とといかけます。 この問いには少し沈黙があります。 「もういちど聞くよ。ホームレスってどんな人?」 「家のない人」 ここではっとしたような顔をする子が何人かいます。 「ホームは"家”、じゃあレスは?」 「”ない”」 「うん、そうだよね」 といいながら、「home・less」と黒板に英語で書きます。 「家、つまりホームがない人だからホームレスなんだよね。 つまり、less というのが、うしろにつくと、 その前のものが”ない”ということを意味するんだよね」 と解説します。 「他に~レスとつく単語を知っている人?」 ときくと、 「ファミレス!」とひとりが冗談をとばし、みなが爆笑します。 「それはちがうよなあ、ファミリーレストランの略だもんね。 ほかには?」 ときくと、少しの沈黙の後、 「ケアレスミスの、ケアレス」 とひとりがこたえてくれます。 そこで黒板に「care・less」 と書きます。 じゃあ、「carelessってどういう意味?」ときくと 「うっかりしている」 といういかにも優等生的な答えになってしまったので、 「less は”~がない”という意味になるんでしょ。 じゃあcare が less っていうのは何がないっていうことになるの?」 と聞きます。 「注意」 と答えがでてきます。 ここで 「---lessはみんながいったとおり ---の部分がないという意味をあらわすんだけど、 単独で使うことができなくて、いつもなにかのうしろにつくものなのね。 homeless, careless どちらもhome, care のうしろについて、家がない、 注意がないという意味を表したでしょ。 何かのうしろにくっつくから接尾辞っていうんだよ」 と解説を加えます。 そこで、問題を出します。 helpless hopeless useless の意味を考えてみよう。 helpless は 「助けがない」でなんとなく△ hopelessは 「希望がない」で○ useless は 「つかえない」で×(爆笑がおきる)。 「でもねえ、この場合のhelp,useは「役にたつ」の「役」の意味になるの。だから?」 「役にたたない」。 ハイ、正解。 しかし、若者ことばの「あいつ、つかえねえ」の意味はuselessではないか、 という反応が来る。 「ああ、そうだね」とあいづちを打つ。 「じゃあ、つかれたから、少しあそぼうか」、 といって、 「ないといいなあと思うものをみんなでかんがえて--less と言う単語を作ってみようか。 ただし、辞書は引かない!英語にそういう単語があるかなしかも関係なし!」。 ひごろの鬱憤晴らしはおそろしいものです。 classless, jyukuless, Englishless, testless, clubless, mathless、 girlfriendless teacherless. なかには、日本語交じりのこんなのも. 説教less, 塾長less, 模試less. 入試less 顧問less 5. 授業をふりかえって 最後に「ほんもの」でない単語を作らせていることは、場合によっては英語教育としてはどうか、という意見もあるかもしれない。しかしながら、[名詞+less]という単語のしくみにはきづいたように思う。 それから、こどもたちは、自分が本当に言いたいことがあると、思いもかけない創造力を発揮するものだとしみじみ感じた。 6. 今後の方向性 less につづき、ful も同じようなことができるであろう。また接頭辞についてもun、in などで同じことができると思う。 大津由紀雄先生からのコメント 興味深い試みですね。子どもたちが新たな語(形)を創造しているところがすばらしいと思います。 「名詞+less」は形容詞になるということも実例を出して確認しておくとさらにいいですね(もちろん、「名詞」「形容詞」という用語の使用は先生の方針次第です)。 さらに、痛し痒しの点もあるのですが、電子辞書を持っている生徒がいれば、逆引き機能の使い方を教えて、検索させるのもよいと思います。 「痛し痒し」と言ったのは、最初から逆引き機能を利用してしまうと、子どもたちの気づきを制限してしまうおそれがあるからです。子どもたち自身が考えた後の、まとめの作業の一環として利用するのがよいと思います。
1. 目的 ことば(英語)の仕組みを単語レベルで生徒に気づかせ、その仕組みを 使ってことばを創造的に使わせてみる。
2. 授業の狙い 英語の語彙を増やす工夫のひとつには、接頭辞接尾辞の知識が必要となる。 しかしながら、接頭辞接尾辞の知識は非常にとぼしい。 ここでは、生徒とのやり取りの中で、接尾辞lessの性質と意味に気づかせ、創造的に—less を使い、[名詞+less] という単語のしくみを定着させる。
3. 対象 中学3年
4. 実際の授業展開 「接尾辞を教える」
ホワイトボードに日本語で「ホームレス」と書きます。 「ホームレス、ということばはもし2つにわけるとしたら、どこでくぎる?」 と生徒にききます。 「”ホーム”は家だから、”ホーム”と”レス”かなあ」 というやや半信半疑な答えが返ってきます。 「じゃあ、ホームレスってどんな人のこと?」と問いかけます。 「家のない人にきまってるじゃん」と答えが返ってきます。 「ホームは"家”だったよね、じゃあ、レスはどういう意味?」 とといかけます。 この問いには少し沈黙があります。 「もういちど聞くよ。ホームレスってどんな人?」 「家のない人」 ここではっとしたような顔をする子が何人かいます。 「ホームは"家”、じゃあレスは?」 「”ない”」 「うん、そうだよね」 といいながら、「home・less」と黒板に英語で書きます。 「家、つまりホームがない人だからホームレスなんだよね。 つまり、less というのが、うしろにつくと、 その前のものが”ない”ということを意味するんだよね」 と解説します。
「他に~レスとつく単語を知っている人?」 ときくと、 「ファミレス!」とひとりが冗談をとばし、みなが爆笑します。 「それはちがうよなあ、ファミリーレストランの略だもんね。 ほかには?」 ときくと、少しの沈黙の後、 「ケアレスミスの、ケアレス」 とひとりがこたえてくれます。
そこで黒板に「care・less」 と書きます。 じゃあ、「carelessってどういう意味?」ときくと 「うっかりしている」 といういかにも優等生的な答えになってしまったので、 「less は”~がない”という意味になるんでしょ。 じゃあcare が less っていうのは何がないっていうことになるの?」 と聞きます。
「注意」 と答えがでてきます。
ここで 「---lessはみんながいったとおり ---の部分がないという意味をあらわすんだけど、 単独で使うことができなくて、いつもなにかのうしろにつくものなのね。 homeless, careless どちらもhome, care のうしろについて、家がない、 注意がないという意味を表したでしょ。 何かのうしろにくっつくから接尾辞っていうんだよ」 と解説を加えます。
そこで、問題を出します。 helpless hopeless useless の意味を考えてみよう。
helpless は 「助けがない」でなんとなく△ hopelessは 「希望がない」で○ useless は 「つかえない」で×(爆笑がおきる)。
「でもねえ、この場合のhelp,useは「役にたつ」の「役」の意味になるの。だから?」 「役にたたない」。
ハイ、正解。
しかし、若者ことばの「あいつ、つかえねえ」の意味はuselessではないか、 という反応が来る。 「ああ、そうだね」とあいづちを打つ。
「じゃあ、つかれたから、少しあそぼうか」、 といって、 「ないといいなあと思うものをみんなでかんがえて--less と言う単語を作ってみようか。 ただし、辞書は引かない!英語にそういう単語があるかなしかも関係なし!」。
ひごろの鬱憤晴らしはおそろしいものです。 classless, jyukuless, Englishless, testless, clubless, mathless、 girlfriendless teacherless.
なかには、日本語交じりのこんなのも. 説教less, 塾長less, 模試less. 入試less 顧問less
5. 授業をふりかえって 最後に「ほんもの」でない単語を作らせていることは、場合によっては英語教育としてはどうか、という意見もあるかもしれない。しかしながら、[名詞+less]という単語のしくみにはきづいたように思う。 それから、こどもたちは、自分が本当に言いたいことがあると、思いもかけない創造力を発揮するものだとしみじみ感じた。
6. 今後の方向性 less につづき、ful も同じようなことができるであろう。また接頭辞についてもun、in などで同じことができると思う。
興味深い試みですね。子どもたちが新たな語(形)を創造しているところがすばらしいと思います。
「名詞+less」は形容詞になるということも実例を出して確認しておくとさらにいいですね(もちろん、「名詞」「形容詞」という用語の使用は先生の方針次第です)。
さらに、痛し痒しの点もあるのですが、電子辞書を持っている生徒がいれば、逆引き機能の使い方を教えて、検索させるのもよいと思います。 「痛し痒し」と言ったのは、最初から逆引き機能を利用してしまうと、子どもたちの気づきを制限してしまうおそれがあるからです。子どもたち自身が考えた後の、まとめの作業の一環として利用するのがよいと思います。
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