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星の王子さま☆学 本書より立ち読み |
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さて本章では、『星の王子さま』を理解するうえで大切な箇所や雑学を、作品の流れに沿って、事典形式でまとめて解説してみた。一〜四章の引用や内容と若干重複する部分があるのはごかんべんいただきたい。この章では、見出しに訳文を使うときはわたしたちが慣れ親しんだ内藤灌氏の訳をなるべく使用した。一方では大人のための『星の王子さま』入門であるという本書の趣旨をかんがみ、内藤灌氏と大きな違いがある場合は新訳も参照し、またわたし自身の解釈をいれた訳文も新しい解釈のためにいれてある。(内藤)(倉橋)という風に訳者名を省略させていただいた。 |
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(第五章 『星の王子さま』小事典 139頁から) |
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レオン・ヴェルト(Léon Werth) |
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ヴェルトが戦後、サン=テグジュペリの思い出をまとめた本には、サンテクスやコンスエロの脇にいるベレー帽に丸メガネの人のよさそうな「おじさん」の写真がたくさん掲載されている。もちろんヴェルト本人である。彼のことを親友だとサン=テグジュペリは公言するが、この二十二歳年上の友人は、父親を物心つかぬうちに亡くしたサンテクスにとって兄でもあり父でもあったのだろう。結局つきあいは十年にみたぬものであったが・・・。ユダヤ系のフランス人。ジャーナリストでもある。フランスに残り、ナチスの手を逃れるために田舎に隠れ住んでいた。「このおとなの人は今フランスに住んでいて、寒くひもじい思いをしているのです。なぐさめられなければなりません」。ナチスの電撃作戦に屈し、分断された祖国を離れ、安全なニューヨークに身を置いたサン=テクジュペリの彼への思いは察するに余りある。『星の王子さま』を最終的にかれに捧げたのは、まもなく自分もフランス解放戦争へ戻っていくとい覚悟の表明でもあろう。・・・ |
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(第五章 『星の王子さま』小事典 140頁から抜粋) |
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ウワバミ(boa) |
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ウワバミ(内藤・小鳥)、大蛇(三野)、大蛇(倉橋)、ボア(山崎・池澤)。 |
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原文では単にボア。毒はないが、巨大なものは四メートルにもなる。南米の密林に住み、獲物を絞め殺して飲み込む。少年アントワーヌが心を躍らせたジャングルの冒険は南米アマゾンのジャングルだったのであろう。語源からいって「水蛇」なのだが、近隣種のアナコンダは九メートルにもなり河や沼沢に住む。実際水の中で獲物をしとめることも多いらしい。ウワバミという訳語は筆者にとっては「大酒飲み」を連想させるが、こうしてウワバミと古風に訳されると典雅な感じがする。塚崎幹夫氏は『星の王子さまの世界』で、獲物を丸ごと飲み込んで六ヶ月間消化するこの大蛇を、六ヶ月おきに新たな侵略に着手するナチス・ドイツへの警鐘だと、年表を示されて解釈されている(『星の王子さまの世界』一二頁。)そういわてみれば、ボアが獲物をとるときに使う、回りから締め付けて事実上息の根を止めておいてから一気に飲み込む手法も、ナチスらしいといえるだろうか。 |
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(第五章 『星の王子さま」小事典 142頁から143頁) |
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