■一筆書評コーナー■  敬称略
昔の人の文章を読むことの訓練を受けてこなかった私にとり、福澤の著作は近づきがたいものだった。福翁自伝ぐらいはと、我慢して目を通したが、なかなか先に進めず、楽しみ味わうというにはほど遠い難行苦行であった。そんな私にとり、この著作集はまさに画期的なものである。あの福澤が目の前に立ち上がり、生きた言葉で語りかけてくる。滋味掬すべき言葉とはこのようなもののことをいうのだろう。こんどは内容の重さに圧倒されてなかなか先に進めない。(法学部・井田良)
最近になって『福澤諭吉著作集』(全12巻、慶應義塾大学出版会)、『福澤諭吉書簡集』(全9巻、岩波書店)とが相次いで出版されたことは嬉しい。わたしは、主として近代日本社会学史に関心を寄せて遅々として研究を試みてきたが、この度の新しい編集や資料収集をできるだけ活用して彼の社会学思想の草創を再考察していきたいと念願しています。歴史の大きな転換のもとでの福沢の人間観や社会観、社会観察者、文明批評家などの模索は、依然として新鮮な道標です。(法学部・川合隆男)
「慶應義塾に於いては・・・常にその軽率ならざるを祈り、論ずるときは大いに論じ黙するときは大いに黙する者をもって真に我が社友と認めるのみ。唯漫然たる江湖(世間)において、論者も不学、聴者も不学、互いに不学無勘弁の下界に戦う者は、捨て之を論ぜざる也」〔諭吉47歳〕――不学無勘弁、今風に言えば'バカ'同士の議論には参加せずに捨てておけ。このように、現代に生きる痛快な名言が、福澤諭吉著作集にはあふれている。(商学部・権丈善一)
二一世紀を迎えて危機に瀕する世界を、とりわけ混迷を極めるアメリカを知るには、誰よりも福沢諭吉を読むことだ。ベンジャミン・フランクリンやトマス・ジェファソンにもたとえられる近代日本建国の父は、ひとまずアメリカ独立精神を摂取することで出発したからである。『学問のすすめ』をはじめとする本著作集は、その詳細な解説と語註により、福沢を通して我が国へ移植されたアメリカ二ズムの可能性と限界を、生き生きと伝えてくれる。(文学部英米文学専攻・巽孝之)
 今回刊行された『福澤諭吉著作集』によって、福澤先生の重要な著作の数々が幸運にも現代の私達に大変身近なものとなった。一読し、福澤先生の著作になお一層の新鮮さを見出したのは小生だけであろうか。今日あまり用いられることのない用語には、ふりがなや丁寧な編者注が添えられており、そのことによって当時の時代感覚が今日のそれと重なってリアルに蘇る。小生のように門前の小僧に等しい者には何よりも有り難い。慶應義塾における福澤研究の成果がこうした形で生かされるのはまことに喜ばしい限りである。
 私達のゼミでは毎年、夏季合宿で『文明論之概略』を輪読してきた。そこでは「遠因」と「近因」という言葉に示されるように、多くの現象を少数個の原理から演繹される命題によって叙述するという、近代科学、すなわち実学の方法が示されている。しかもその実学の方法は自然現象、社会現象の間に何の断絶もなく適用できるという、驚くべきモダンな認識が示されている。こうした認識の具体的記述として『窮理図解』を学生諸君には薦めようと考えていたのだが、従来は学生諸君が安心して閲覧できる文献がなかった。しかし、有り難いことに『福澤諭吉著作集』を手に取れば、こうした貴重な文献を誰もが安心して読むことができるようになったのだ。
 本著作集を企画され編集にご尽力いただいた諸兄には心から敬意を表するとともに感謝申し上げたい。(経済学部・宮内環)
私の「福澤」入門
 私は、こと福澤に関しては素人もいいところである。正直言って、これまでまともに読んだのは、『福翁自伝』『学問のすすめ』『文明論之概略』くらいである。そこで、一念発起、この著作集を全部読んでみようととりかかった。そんな私のような読者にとってこの著作集は格好の福澤入門となった。まず、本文を読み、それから解説を読む。福澤の考え方に感心したり、批判的になったり、いろいろあるけれど、解説をよく読むことによって、誤解が解けることもかなり多かった。もう一度、今度はじっくりと読むのを楽しみにしている。(商学部・湯川武)
…激動、混迷する時代の本質に迫ろうとする時、福沢の著作は限りない示唆を与えてくれる。(3)は振り仮名と注がふんだんに施され、若い世代にも親しめる福沢の世界がある。…読売新聞 2003/12/28 朝刊「2003年 読書委員が選ぶベスト3」(橋本五郎)より詳細はこちらからご覧ください。表記されている新聞画像が表示されます。
愛読者カードで寄せられたご感想の一部です。
難しい字には振り仮名が付けられ、注がふんだんに施されていて読み易い。「福澤諭吉」はいつも読む度に私たちに限りない示唆を与えてくれ、少しの時間でも読む機会(時間)があるとその日は充実した感じが致します。
難しい今日の先行きの見えぬ今の時代も福澤諭吉に触れると解決の糸口を与えてくれます。(29歳男性)
【丁丑公論 瘠我慢の説】瘠我慢の説は福澤の真骨頂であり感激して読みました。前の全集がすでに古いこともあり貴重な著作集だと思っています。(37歳男性)
構造改革が喧伝されて久しいが、本著作集には、その精神的な拠り所となる内容がふんだんに盛り込まれています。(38歳男性)
【学問のすゝめ】はるか二十数年前慶應義塾大学で学んだ学生時代を思い出しました。私の青春といろどり、生き抜いてきた今現在の原動力となったのは福澤先生だったのだと今なつかしく読みすすめています。(39歳男性)
【日本婦人論 日本男子論】女性論に関する必読文献だということだったので読みました。解説といっしょに読み進むうちに、面白くなってきました。現実的であったり理想的であったりする自由な書き方に共感を持つ人は多いのではないでしょうか。(40歳女性)
日本がその体制を確立しようと挙国一致の下、まい進したその時代に福沢先生が世の中に示された指針、生き方は、21世紀の現在においても決して色あせることはない。混迷する日本の現状だからこそ、福沢先生の教えはより新鮮味を持って読む者を引きつけるものがある。(42歳男性)
折にふれて気の赴くままに一刊を手にしてページを開いて居ります。これからも親しく拝読させて頂きます。(44歳男性)
・本の大きさが手頃な大きさである。
・各々のページの注釈が見開きの左側にある点がとても工夫されている。全ての疑問を見開きのページの中で解決できる点がよかった。(54歳男性)
【学問のすゝめ】論理構成が非常に明快なのにびっくりしました。現在に生きている私達が読んでも決して古さを感じさせない非常に客観的かつ有益な内容です。感動しました。(53歳男性)
【学問之独立 慶應義塾之記】語注が各見開き頁にあるのは誠に便利で画期的なことと思います。独立自尊、自由、平等、競争の精神等福澤先生が我国に紹介した思想は未だに色あせることなく、それどころか百年以上たって未だ浸透しないこの国の不甲斐無さを残念に思います。(53歳男性)
・注釈が充実しているので、読みやすい。
・解説が興味深い点を記述しているので、おもしろい。(55歳男性)
『福翁自伝』は何度読んでも、新しい感銘を受ける。(61歳男性)
『実業論』『民間経済録』・・・福沢の偉大さに今更ながら敬服しています。ビジネスマンには『学問のすゝめ』『福翁自伝』よりも面白いし、勉強になると思います。福沢はやはり古くて新しい。(62歳男性)
近代日本はこのようなオピニオン・リーダーの存在によりなったかとの感を強くいたしました。途上国支援の業務に携わるとき、福沢先生に見られる該博な知識と深遠な思考にもとづくオピニオン・リーダーを我が国が持った幸運を感じずにはいられません。(63歳男性)
40数年前、塾生だった頃、福沢先生の本を読みとばしましたが、内容は余り理解できなかったと思うのですが、改めて、定年退職後、自由な時間で今回熟読できました。今の時代にあっても、なお新鮮さ、説得力を持ち、高揚感をもって充実した時間を持つことができました。(63歳男性)
福澤先生の著作を久しぶりに読ませていただきました。これまでも文庫本で断片的に読んではいましたが、あらためて、先生の先の読みの深さに感心した次第です。先行き不透明といわれている現代、少しでも先が見透せる知識、感覚を身につけたいものと実感したところです。(64歳男性)
【学問のすゝめ】縁あって大垣にある岐阜経済大学ボート部監督となり、部創部立上げを行っています。あらためて先生の本を読み直し、学生の指導に役立てばと、思っています。(65歳男性)
【福翁百話】一月おきに送られてくる著作集は楽しみであり、また読むのに苦労します。相当熱心に読まないと追い付けません。福翁百話、初めの方を読んだだけですが、先生の宇宙に対する慧眼には今更乍ら驚きました。またこのような高尚な文章が掲載された時事新報という新聞がどんなに素晴らしかったか、尊敬の至りです。これからも毎日せっせと読んで、勉強しようと思います。(66歳男性)
全巻通じて活字が大きいことが我々にとって助かる。ルビも振られている事も若い人には読もうとする意志が湧くでしょう。次回この軽装版を発行される事を期待すること大。(67歳男性)
やはり『学問のすゝめ』と『福翁自伝』が一番読みごたえがあり、繰り返し読んでいます。塾卒業51年、長女とそのつれあい、そして孫も普通部にお世話になっています。歴代読みつづけたいと思っています。(76歳男性)
【西洋事情】政治・経済のことから学校、新聞、博覧会、電信、瓦斯灯その他社会全体の組織など金銭出納のことまで福澤先生はどの様にしてこれらのことを勉強されたのか驚くほどでありました。(83歳男性)

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