本書は「脳と精神」を考察するに当たり、脳の形態学、発生学的研究の成果に立脚し、@高次神経活動のうち認識系に比して情動系の研究が遅れている、A視覚系に比して聴覚系の研究が遅れている、B音の響きと情操という要素の融合する音楽について、専門家の関心に応えられる脳研究の成果を自然科学者は持っていない、という課題を設定した。本書は、その課題に応える神経科学、精神医学分野の研究生活40年を超える著者の研究のいわば一里塚である。精神科医である著者は、一世紀以上も前に、常に脳の生理学的・客観的要素の分析をベースに奮闘した、パブロフの精神現象に対する科学的アプローチに注目し、共鳴した。
第1章 はじめに―脳と精神・素描 第2章 音楽、ヒトの脳と響きのARS 第3章 「言葉」―響きは語る 第4章 能動的表現と高次神経活動―運動、認知、情動、意欲、記憶など 第5章 音と言葉と形象 第6章 音と光に関する考察 第7章 ゲシュタルト認識と脳の活動 第8章 情動発現の脳内機構―新皮質と辺縁系 第9章 リズム/テンポのズレとその調和 第10章 高次神経活動と精神医学 第11章 心身問題と条件反射 第12章 脳と精神の科学の発展と諸問題 第13章 エピローグ(Epi ……
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川村光毅(かわむら こうき) 1934年、土浦市に生まれる。1962年、医師免許取得。1965年、精神衛生鑑定医(現在:精神保健指定医)取得。2005年、東京シティフィル合唱団メンバー。 現在、慶應義塾大学名誉教授、精神科勤務医(非常勤)。理化学研究所脳科学総合研究センター客員研究員。東京都神経科学総合研究所客員研究員。ロンドン大学神経学研究所(Queen Square)客員教授。
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