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The Cambrige Gazette


グローバル時代における知的武者修行を目指す若人に贈る
栗原航海(後悔)日誌@Harvard

『ケンブリッジ・ガゼット:Lessons Learned』

第5号(2006年10月)
 

 

■ 目次 ■

 

1.新学期が開始したハーバードより
2. 栗原後悔日誌@ Harvard
3.教養という人生のお化粧も忘れずに
ヒトの和」を生み出す教養
一市民として必須の教養
教養: 人生のお化粧として
4. 編集後記


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1. 新学期が開始したハーバードより

9月も中旬になれば、授業と研究活動も一段と本格化します。そうした爽やかさと緊張感が漂うハーバードから「グローバル時代における知的武者修行」を目指す若い方々を対象としたメッセージ第5号をお届けします。

2. 栗原後悔日誌@Harvard


 4ヵ月程前、本校の関西経済同友会フェローで関西電力の垣口裕則氏から素敵なプレゼントを頂きました。同氏は伝統的な造り酒屋が在る京都伏見のご出身で、私に5月に開かれた全国新酒鑑評会で金賞を受賞した貴重な日本酒を下さいました。歓喜した私は早速自宅でそのお酒の色香と味を堪能しました。が、そこでハタと気が付きました―「何かが足りない!」と。確かに美酒には、美味しいお料理、美しい器、ムードある照明、そして何にもまして素晴らしい飲み友達が必要です。気楽な身分の単身赴任をし、外食を中心にしている私にはこの麗しいお酒以外は何も手元に無いことを、この美酒が美酒たるが故に私に気が付かせてくれたのです。2杯目を飲む時に、行き着けのお寿司屋さんに行こうと思いましたが、栓の開いたお酒を持参するのも面倒だし、自慢するみたいで変でもあるし、また板さん達にもお酒を分けると…とワガママな邪心も浮かんできて、結局、李白に倣い、月と私と私の影とでそのお酒を楽しみました。こうして美酒を楽しむには、料理、器、相手等のバランスが大切だと痛感した次第です。

 随分昔の話ですが、作家の村上龍氏が司会する『Ryu’s Bar』というテレビ対談番組がありました。或る夜、番組のゲストとして世界銀行の多数国間投資保証機関(MIGA)初代長官に就任された寺澤芳男氏が出演されました。随分昔なので正確な言葉は忘れましたが、寺澤氏は「ニューヨークやワシントンDCのエリート達は美術や音楽等、芸術の世界でも一流の知識を持っており、そうした教養を持たないとまともな相手として扱ってくれない」旨のお話をされました。それから暫くして私のワシントンDC出張中、或る日米欧三極会議が開催され、初めて寺澤氏とお目にかかる機会が巡って来ました。同氏はお忘れになられたと思いますが、会議の休憩時間時、私は寺澤氏に親しげに近づき唐突にも「『Ryu’s Bar』を拝見しました。素晴らしいことを仰ってましたね」と興奮気味で話しかけてしまいました。同氏の微笑みつつも驚いた顔を思い出すと今でも自らの粗忽な行動を恥かしく思います。さて、小誌創刊号で「知的武者修行」では、(1)一流の専門知識、(2)幅広い一般教養、(3)語学力、(4)マナーと交際術、(5)多角的・重層的な協力・相互補助の精神が重要であると申し上げました。そして、確かに寺澤氏が語る如く、(1)は当然のこととして、それとバランス良く、(2)も同様に大切だと思います。

 

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著者プロフィール:栗原潤 (くりはら・じゅん)
ハーバード大学ケネディスクール[行政大学院]シニア・フェロー[上席研究員]
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