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連載

The Cambrige Gazette


グローバル時代における知的武者修行を目指す若人に贈る
栗原航海(後悔)日誌@Harvard

『ケンブリッジ・ガゼット:Lessons Learned』

第6号(2006年11月)
 
 

1. 短い秋を惜しむハーバードより
2. 栗原後悔日誌@Harvard
3. 日中関係: 21 世紀東亜最大の課題
米中関係@Harvard
グローバル時代の日中関係
日本の国益を考える
4. 編集後記


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1. 短い秋を惜しむハーバードより

 10 月に入ると秋も深まり、ニューイングランドの美しい紅葉の季節も駆け足のように過 ぎて行きます。「グローバル時代における知的武者修行」を目指す若い方々を対象とした ニューズレター第6 号をお届けします。

 皆様は秋の味覚を日本で楽しまれていることでしょう。中国人と秋の味覚の話をすれ ば一番に浮かんでくるのが上海蟹(大※蟹)です。3 ヵ月程前の8 月4 日、「アレ? もう旬だ ったっけ?」と驚きつつ新華社通信の或る記事(ウェブ版)に目を奪われました?「独『ハン ブルグ・アーベントブラット』紙: 中国の上海蟹欧州で事故(※堡※※: 中国大※蟹欧洲 ‘※※’)」という表題の記事です。エルベ川流域で上海蟹が大繁殖し、生態系においても「中国脅威論(中国威※※)」が高まっていることをハンブルグの新聞が伝えているとのことでした。ドイツをはじめ欧州諸国は今後断乎たる対抗処置を採ることや、2003 年からは欧州産上海蟹が中国へ出荷されていることを伝えていました。私はこの記事を読んで、中国の「ヒト」、「モノ」、「カネ」そして「情報」、更には「カニ」までが世界中を巡っていると知り、中国のグローバル的な展開に改めて驚嘆しております。

2. 栗原後悔日誌@Harvard


 10月中旬、私が所属する研究所(M-RCBG)も活動が本格化しました。私は本校唯一の東 洋人シニア・フェロー及びM-RCBG アジア・プログラムのシニア・フェローとして、セン ター全体の活動とアジア全般に関連したプログラム活動を中心に参画しております。2 ヵ 月程前の9 月14 日午後、今期初の公式レセプションを開き、グラスを片手に懐かしい方々 や新しい方々と互いに抱負を語り合いました。その時、在ボストン日本総領事館の鈴木庸一総領事をお招きし、新たな中国の友人をご紹介することができたことは私の大きな喜びであります。小誌でも時々触れておりますが、本学には中国の高級官僚や研究者も数多く滞在されております。その滞在方法も様々な形態があり、3、4 週間といった極めて短い滞在から、2、3 年といった形まで様々です。アジア出身のフェローを国籍別にみますと、中国が9、台湾が2、日本が4、韓国が1 と、中国出身が圧倒的多数を占めています。中国出身者の人数も印象的ですが、質的にも驚異的に優秀な方々がいらしており、中国におけるトップレベルの「人材」は凄いものだと改めて感心しております。今年は清華大学や中国社会科学院(CASS)の優秀な研究者の方々に加えて、中国政府からは副大臣級の方が3 人―農業部門の近代化を中国で担当されている中※全国供※合作※社(ACFSMC)の李春生理事会副主任、知的財産権にご関心の国※院法制※公室の汪永清副主任、中央・地方政府間関係にご関心をお持ちの※州省※※※易委員会主任の張群山(※群山)副省※―がニューワールド・フェローとして参加されています。

 小誌7月号でも触れましたが、日米中三極関係を扱った私の本が来年年初に慶應義塾大学出版会から出版される予定です。これに関して、アンソニー・セイチ教授をはじめとするケンブリッジの研究者にご協力頂くと同時に、汪副主任のように2005年1月8日に設立された呉儀(※※)副首相をリーダーとする国家知識財産権戦略指導委員会(国家知※※※※略※※小※)のメンバーとしてこの問題に取り組む方から直接お話が伺えると考えただけでワクワクしております。汪氏とは本学ロー・スクール(HLS)のウィリアム・アルフォード教授が東アジア法学研究プログラムのディレクターをなさっているので一緒に会合等に参加しようと言っております。また私は多くの方々と同じく陽明学を学んでいます。張副省長をご紹介頂いた時、私は「えっ、王陽明の縁の深い貴州省から?」と思わず微笑みつつお話したら大変喜んで下さいました。李副主任と部屋も近い私は毎朝挨拶を交わし、お忙しい中恐縮しつつも、農業分野の近代化投資における御苦労を直接伺っております。若い有能な皆様、良かれ悪しかれ、また好むと好まざるとにかかわらず、日中両国は物理的に離れられないぐらい近い距離にある国同士であり、これは変更不可能です。我が国が平和と繁栄を将来にわたって享受できるかどうかは、日本が如何なる形で中国と付き合うかにかかっています。この意味で私は本学で隣国中国の優れた方々と直接話しながら将来の東アジアを考えてゆきたいと思っております。

※はこのサイトでは表示されない文字です。PDFファイルには表示されています。

 

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著者プロフィール:栗原潤 (くりはら・じゅん)
ハーバード大学ケネディスクール[行政大学院]シニア・フェロー[上席研究員]
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