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連載

The Cambrige Gazette


グローバル時代における知的武者修行を目指す若人に贈る
栗原航海(後悔)日誌@Harvard

『ケンブリッジ・ガゼット:Lessons Learned』

第3号(2006年8月)
 
 

1.真夏のハーバードより
2. 栗原航海日誌@ Harvard
3.結局は「ヒトの和」と「ヒトの輪」
「ヒトの和」
「ヒトの和」から「ヒトの輪」へ
IT時代の「ヒトの和と輪」
4. 編集後記


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1. 真夏のハーバードより

 7月下旬に一週間程の一時帰国をし、親しい人と語らった後、8月1日、静かなケンブリッジに舞い戻りました。爽やかな夏を迎えたケンブリッジより、「グローバル時代における知的武者修行」を目指す若い方々を対象としたメッセージ第3号をお届けします。

2. 栗原後悔日誌@Harvard

 一時帰国の際、大橋英夫専修大学教授、高原明生東京大学教授、そして私が長年お世話になっている公安調査庁の荒井崇氏及び法務省の高橋邦夫東京入国管理局長と楽しい夜を過ごしました。こうした方々は中国関連の調査研究がご縁で親しくなった方ばかりです。昨年3月に『現代中国経済論』を著された大橋先生とは既に20年程の仲になります。また、私の北京出張時、日本大使館で公使を務められ、また本学でのご経験をお持ちの高橋氏を荒井氏から紹介して頂き、「ご縁」の持つ不思議さと有り難さを感じています。高原先生とは本学で初めてお目にかかり、そのお人柄とご見識に感銘を受けて以来、粗忽者の私は、図々しくも先生のお知恵をしばしば拝借しております。こうして、私は中国を中心とする国際関係に関して深くまた幅広い知識をお持ちの方々に囲まれた幸運に感謝しております。

 来年年初に、慶應義塾大学出版会から中国と中国に向かい合う日米両国に焦点を当てた本を出版する予定で、現在、私はその原稿を執筆している最中です。本の狙いは、「米国から観た中国」を日本の皆様方にお伝えしたいという点にあります。ご承知の通り、発展が著しく動静が激しいために中国は極めて捉え難い国です。そうした隣国を冷静かつ正確に知る必要のある日本は、見識の有る人々と、可能な限り、直接的・双方向的・継続的・多角的な知的対話を行った上で、中国情勢を把握する必要があります。しかし、国際的な対話を行う際、当然のことではありますが、中国は相手国によって情報発信の内容や姿勢を微妙に変えております。加えて、対話の際に代表する中国人の構成自体、相手が米国の時と日本の時とでは異なっている場合もあります。この意味で、「日本から観た中国」と「米国から観た中国」は、様々な点で異なっており、互いに補完関係の間柄になると考えています。従って、私達の「日本から観た中国」を補完する意味で、そして複眼的思考を持つために「米国から観た中国(正確には日本人研究員がハーバードから観た中国)」を明らかにしたいと考えている訳です。
 こうした本を私単独で完成させることは不可能です。第一に、「日本から観た中国」を正確に把握するには、冒頭に紹介した優れた日本の「中国を観る目」を持った人々の助けが必要です。第二に、米国に居たからといって特別中国が良く観える訳ではありません。国際関係論のジョセフ・ナイ教授やグラアム・アリソン教授、経済学のジェフリー・フランケル教授やリチャード・クーパー教授、中国問題のエズラ・ヴォーゲル教授やアンソニー・セイチ教授と専門家から直接、「米国の対中観」を伺う必要もあります。第三に、中国に居る友人に加え、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)で研修中・研究中の中国政府高級官僚及び清華大学、北京大学、復旦大学等の研究者と、直接的・双方向的・継続的な情報交換を通じて私の情報を多角的に検証することも重要です。そして第四に、多角的・重層的に検討された情報に基づき述べた私の意見を「本」にするためには、慶應義塾大学出版会の方々の「隠れた」努力が必要不可欠です。こうして考えてみますと、何事を成し遂げるにしても、自分一人では何も出来ないということが理解できると思います。これは当たり前のことではありますが、私達はその当たり前のことに慣れきってしまいがちで、往々にして忘れてしまう事があります。

 

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著者プロフィール:栗原潤 (くりはら・じゅん)
ハーバード大学ケネディスクール[行政大学院]シニア・フェロー[上席研究員]
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