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立ち読み  
編集後記  第55巻7号 2007年7月
 

▼平成17年度体力・運動能力調査結果では、青少年(6〜19歳)の「50メートル走」「持久走」「立ち幅とび」「ソフトボール投げ」「ハンドボール投げ」及び「握力」の年次推移が示されており、持久走及び立ち幅とびは引き続き明らかな低下傾向を示していることが報告されている。また、運動不足による子どもの肥満の増加が指摘されており、肥満に伴う高血圧、糖尿病、心臓病などの生活習慣病につながる危険性も憂慮されている。
▼興味深いことに、体力・運動能力調査結果では、6〜17歳の持久力は「朝食を食べる」群が「朝食を食べない」群より高く、1日の睡眠時間が「8時間以上」の群が「6時間未満」の群より高い傾向にあり、1日のテレビ視聴時間が「3時間未満」の群が「3時間以上」の群に比べて高い傾向を示している。持久力があることと運動する生活習慣は関係しており、朝食を食べ、よく眠り、テレビを見る時間が短い生活習慣とも関連している。どちらが原因で、結果であるかということは、あまり問題にならない。朝食を食べ、よく眠り、遅くまでテレビを見なければ、持久力が高い傾向になるであろうし、運動する生活習慣をもてば、肉体が疲れるので、早く寝ることになり、テレビを見る時間が短く、おなかも空き、朝食を食べるようになるとも考えられる。
▼体力の低下の原因は「学校外の学習活動や室内遊び時間の増加による、外遊びやスポーツ活動時間の減少」「空き地や生活道路といった子どもたちの手軽な遊び場の減少」「少子化や、学校外の学習活動などによる仲間の減少」などがあげられている。その対策として、地域において子どもが体を動かすための環境整備の重要性が指摘されている。もちろん、環境整備は重要であるが、体力をつける上で大事なのは、「歩く時間」を増やす等の子どもの生活習慣の変化である。
▼とりわけ重要なことは、運動をしない子どもに運動量を増やしてもらうことである。運動をしない子どもは、運動が不得手で、競争が嫌いである可能性が高い。地域でのスポーツのイベントに参加することを誘ったり、親子で週末にスポーツをしたりすることも、良い経験になるであろう。しかし、重要なのは毎日の運動量を増やすことである。
▼ 私は、子どもの運動量を高めるために、歩数を増やすことを勧めている。シンプルで、しかも確実であるからである。子どもに歩数計を持たせると、効果は上がりやすい。目標を決めて、がんばって達成できれば、うんと褒めてあげる。子どもはそれが嬉しくて、たくさん歩くようになる。歩数が増えるので買い物に行ってくれたりするようにもなる。肥満などがある場合は、体重も測定して効果を実感してもらうと、相乗効果がある。子どもが成長する上で必要なのは、成功体験である。人間が成長する上では競争も必要であるが、自分ができることをコツコツとやって目標を達成していくことを学ぶのが基本である。歩くことで肥満を克服することができれば、それは将来の財産になるであろう。

(馬場園 明)
 
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