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立ち読み  
編集後記  第55巻2号 2007年2月
 
▼2006年も子どもたちにとってつらい年でした。親(養育者)の虐待による子どもたちの死亡事件が相次いで報道され、私たちの心を痛めました。また、いじめによる子どもたちの自殺もまるで流行するように報道されました。年が明けて松の内もあけぬのに、母親による虐待死の事件がテレビのニュースで流れました。2007年もまた子どもたちにとってほんとうにつらい年になるのでは……と新年早々晴れぬ気持ちです。
▼少子化や核家族化が進むなかで、家庭での育児機能が低下し、地域の人たちに近所の人の子育てを応援する気持ちが希薄になってしまった今のわが国は、子どもを育てる環境が破壊されているとさえ思えます。
▼昨年読売新聞は「豊かさ再発見」というシリーズものを掲載しましたが、その第6部「次世代をはぐくむ」のなかで、合計特殊出生率が奄美大島の徳之島天城町が2.81であるのに対し、東京の渋谷区は0.75と紹介しています。
▼ある渋谷区の母親は“自分が思っていた育児とは違った。もう1人産みたいとは思わない”とこぼしているのに対し、天城町の母親たちは“きょうだいは多いほうがいいと思っている”という。わが国の少子化の原因には多くの因子があると思われますが、読売新聞はわが国の中でも「多子」と「少子」に分かれるのは、子育てを支える“地域力”の違いだと主張しています。
▼わが国の社会保障全体に使われる金額はおおよそ84兆円、子どもたちに使われるのはそのわずか4%にも満たないのです。そんななかで子どもたちの未来を考えて何らかの行動を起こそうという人たちが、すこしずつ増えてきつつあると感じています。地方自治体やNPOなどの民間団体が子育てを支援しようとする動きも目立つようになっているようです。
▼厚生労働省も「地域全体で子育てを支援する基盤を図るため、子育て家庭の支援活動の企画、調整、実施を担当する職員を配置し、地域の子育て家庭に対する育児支援を行うことを目的」として、地域子育て支援センター事業を推進しています。
▼今回は今の日本で地域ぐるみで子育てをどのようにサポートしていくか特集を組んでみました。「明日の子どもたちのために」何かがみえてくれば幸いです。

(満留昭久)
 
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