10 「本当のコミュニティ」

 筆者のフィールドワークの最中に、ボストン郊外で年老いた女性が自宅の鍵を無くし、屋外で凍死するという悲劇が起きた。この女性は近所の家数軒で保護を求めたが、彼女がただの見知らぬ人だと分かると、どの家もドアを開けることを拒否したという(一九九四年一月二一日付ボストン・グローブ紙)。このような冷淡さは、サウスィでは「とても考えられないこと」だ。
 「サウスィは今でも本当のコミュニティです。ご近所さんのことは、お互い知らない人はいません。夜は鍵をかけませんし、シャワーが故障すれば、近所の家で貸してもらえます。全く問題ありません。そりゃもう絶対です。あそこの角の店に行ったことがありますか? あの店の人達とは、もう何十年も前からの知った仲なので、物を買う時はツケにしてもらうこともあります。大きな買い物はStop & Shop(スーパー・マーケット)に行きますが、日用品はあの店で買っています。値段は少し高いのですが、あそこで買い物をすることで、このコミュニティを持たせているように思えるのです。つまるところ、われわれは友人であって、お客ではないのですよ。そんなに合理的になるべきじゃありません。あの店は、子供達がちゃんとやっているかどうか確かめたり、あっちこっちで何が起きているのか情報を交換し合ったりする、コミュニティ・センターみたいなものですから。」
地図に戻る